卵供養

幸まる

飼い主の務め?

ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、私はメスのオカメインコ(オカメさん)と暮らしています。

つい最近、オカメさんは春の抱卵を終えました。

一羽飼いをしていても、メスのインコは発情期に無精卵を産むのです。


約三週間の抱卵を終えて残った四個の卵。

この白い卵を見ると、あの頃のことが甦ります。




二十年程前の春の日。


当時一人暮らしをしていた私が実家に帰った時、姉が白い小さな卵を差し出して言いました。


「これ、目玉焼きにして」


姉はメスのオカメインコと暮らしていて、ちょうど抱卵を終えたところだったのです。

我が子(愛鳥)の卵食べるの!?と思いましたが、姉曰く「卵を供養するのは飼い主の務め」とのこと。


……なるほど。


無精卵なので供養もなにもない気はしますが、愛鳥が生命を削って産んだ卵、確かにポイと捨てる気にはなれません。

それにまあ、妹とは姉に従うものです(違う?)。

私は言われた通り目玉焼きを作りました。


うずら卵よりも小さな、目玉焼き。

鶏卵より黄身の割合が大きく、白っぽい黄色。

無殺菌卵なのでよく焼きましたが、火を通しても白身はゼラチン状にぷるぷるです。



さて、そのお味は?


……淡白すぎて、正直不味ますい。



食べ終わった姉は言いました。


「来年はプリンにしよう」


……姉は甘党でした。

美味しく食べる方法を考えての発言だったのかもしれませんが、まあ、来年になったら忘れているだろうと思いました。




翌年。


「幸まる、プリン作って」


差し出された四個の卵。

えー…覚えてたんだ?


まあそれでも、約束でしたから(したのか?)作りましょう。

プリンの黄金比と言われる、卵 1 : 牛乳 2 : 砂糖 0.5で計量し、おちょこで蒸します。

無殺菌卵なので必要以上に蒸しましたが、やっぱりゆるゆるです。



さて、そのお味は?


……薄っす……。



バニラエッセンス風味のゲル状物体を食べ終わった姉は言いました。


「うん、もういいかな」


満足したのかどうなのか、翌年以降には調理しろとは言われませんでしたね。




抱卵を終えたオカメさんの卵、私は庭の一角に埋めます。

夏になったら、毎年そこでキュウリが育ちます。

……ん?

これもオカメさんの卵を食べていることになるのかしら?



 ○ ○ ○



ちなみに、子供向け番組でインコの卵を食べて良いかという質問に、「病気があるかもしれないので食べない方が良い」と専門家が答えていたので、無理に食べることはオススメしません。

食べたい方は自己責任でお願いしますね。



《 おしまい 》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

卵供養 幸まる @karamitu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ