第11話

アリッサが自宅でまったりと過ごしていた一方、ノーレッド第一王子はあわただしくその体を動かしていた。


「急いで見つけてくれ!あの日王宮で開催された仮面舞踏会に参加していて、私に対して全く先入観を抱かなかった女性だ!」

「い、いきなりそんなことを言われましても…。ほ、他に何か特徴などは…?」

「レブル!お前ならなんとかしてくれるだろう!私にとっての運命の相手は、間違いなく彼女なのだ!」

「ノ、ノーレッド様がそこまでおっしゃられるとは…。わ、分かりました。なんとか見つけ出してみせましょう」


――――


レブルはあの日の参加者の名簿から、おそらくノーレッドがダンスを行った相手はこの3人のうちの誰かであろうと推測した。

しかしそれ以上は絞り込むことができず、いよいよ彼はノーレッド自身にその相手を判定してもらうこととした。


「こちらの3人の中に、ノーレッド様があの日ダンスを行った相手がいると思うのですが…。いかがでしょう?」


レブルのその言葉と同時に、まず一人の女性が言葉を発する。


「それは私です!私は個の頭の中にはっきりと覚えています!ノーレッド様とダンスを行い、非常にいい雰囲気で舞踏会を楽しむことができました!他の二人ではありません!信じてください!」


その言葉を聞いた二人目の女性は、さらなる自信を見せつけるかのような雰囲気でこう言葉を続ける。


「あらまぁ、よくもまぁそんな大嘘を自信満々に言えるわね」

「…なんですって?」

「だってそうじゃない。なぜならあの日、ノーレッド様とダンスをしたのは他でもない、この私なのだから」

「…はぁ?」

「だからあなたの言っていることが嘘だと言っているのよ。もうわかったでしょう?」

「いい加減にしなさい!ノーレッド様の前で嘘をつくなんて許しがたい行為だわ!私が妃になったならまずあなたの事を裁いてあげる!」

「それはこっちのセリフ!今からせいぜい震えてその日を待っていなさい!」


どこまでも攻撃を連発していく二人であったが、ノーレッドはそのどちらも自信の瞳にとらえてはいなかった。

彼がその心に運命を感じ取ったのは、そのどちらでもない3人目…。


「…よろしければ、私の手を取っていただけますか?」


ノーレッドからそう言われた女性は、そのままそっとノーレッドの上に自身の手を重ねる。

それをもってしても何の症状も感じられないノーレッドは、それを確信として目の前の女性に、自信をもってこう告げた。


「ぜひ、あなたとお話がしたい。あの日、私の誘いを受けてくださった、あなたに」


――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

女性恐怖症な第一王子様、でも私だけは大丈夫らしいです 大舟 @Daisen0926

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画