聖女の身代わりのために【変化魔法】で聖女とそっくりに変身したおじさん。隣国の皇子には捨てられたが、なぜかその妹の皇女に懐かれる。(超短縮版)

にがりの少なかった豆腐

身代わり変身おじさんです(絶望)

 

 本作は単話完結作品です。

 ―――――



 【変化魔法】という特殊な魔法を覚えて生まれた俺氏。なぜか今、王の間に呼び出される。


「お前が、ソルターであっているか?」


 でかい椅子に座った、肖像画でしか見たことのなかった国王が俺に話しかけてくる。


「はい」

 普通に威圧感あって、こええぇ……


 どうしてこんなところに平民の俺が呼び出されているのか。理由としては先に挙げた魔法くらいだが、もしかしてこれが法に触れるからと処刑されるのか?


 魔法ギルドには違法魔法だからと使用するのを禁止されているし、今の今まで日常で使ったことはない。

 数度だけ、ギルドからの依頼で身代わりとして使ったきりだ。


「此度の話は伺っているか?」


「……なにも」

 何の話なんですかねぇ! 有無を言わせず連れてこられたから何も聞いてねぇんですよねぇ。おい! そこの騎士さんよぉ!


 国王少し戸惑ってんじぇねぇかよ。どうすんだよこれ、もしかして王様に今回のこと説明させんのか?


「ここにお前を連れてきたのは誰だ?」


「……申し訳ありません。わからないです」

 チラ見したら俺を王城に連行してきた騎士にめっちゃ睨まれているんだよね! ここでポロったらこの後何されるかわかんぇから言えねぇんだわ。

 そもそも名前もわからんし。こいつですって指して、国王の前で言うのもどうかと思うしさ。


「そうか。そのあたりは後でそこにいる騎士を問い詰めることにするかな」


 がっつりバレてんじゃねぇかよ草ァ! ザマァねぇわ。


「今回あなたをここへ呼び出したのは、隣国であるゴーシャ帝国と我が国の聖女に関してのことです」


 国王の隣に立っていた宰相っぽい人が丁寧に説明してくれる。


「我が国の聖女様が、ゴーシャ帝国の第2皇子から求婚されました。しかし求婚とは言いましたが、我が国の立場では断ることが出来ないため、実際のところは強制です」


 ゴーシャ帝国って言えば強欲帝国とか言われるこの国の隣に位置しているでかい国のことだ。

 うちの国は国土が小さいし、周辺国の中でも力がないから普段から結構無茶振りされていたりするんだよな。


 一部の食料とか、そこに依存しているから強く言えないし、言ったら何されるかわからんっていう。

 まさか、聖女を求めてくるなんて思ってなかったけど。


「聖女様は我が国の宝だ。おいそれと他国に移動させるわけにはいかない」


 聖女ってのは文字通り、聖なる力を持っている女性のことを指す。この国に居る聖女も特別な力を持っているわけだ。


 で、ここまで説明されれば何となく俺がここに呼ばれた理由は見当がつく。


「そこで、ソルター殿には聖女の姿に変身してもらい、身代わりをしてほしいのだ」


 そら来たことか!(絶望)


「あの」

 いやでも、【変化魔法】って万能じゃないんだよな。


「なんだね」


「その、いずれ誤魔化せなくなると思うのですが」

 俺の魔法は確かに他人の見た目そっくりに変身することはできる。しかし、当然だが変身した当初の姿のままでいくら年が過ぎたところで成長もしないし老化もしない。見た目が変化することはないのだ。


「問題はない」


 うっそだろ!?

 いやバレるって。ばれたらどうなると思ってんの? 俺はまあ殺されるとして、国間の問題になるでしょ。そこ理解しているでしょ!?


「ゴーシャ帝国の皇子から求婚されたわけだが、あちら側は本格的に聖女様と婚約を結ぶつもりはないのだ。あくまで我が国の力を削ぎたい、それだけのために聖女様に求婚してきたにすぎない」


 そういうことっすか。そうであればまあ、バレない……わけねぇよなぁ!


 どう考えてもバレないってことはなだろ。

 確かにさ。俺の【変化魔法】は見た目、感触、声に匂いまで真似られるし、その人物の能力もそれなりに使えるようになる。

 後まぁ、考えたくないけど、男女のあれこれもできなくはない。考えたくはないけど。


 だから、その場しのぎにはかなり優秀だけど、長期で見たらそうでもないんだよ。


「無理があるのでは」

 絶対バレるから考え直してほしいわ。


「大丈夫だ。問題ない」


 そんなわけねぇだろうガアアァア!!


 俺は顔に出すことなく、心の中でそう絶叫した。いやまじで問題ないわけないだろうがよ。


 とはいえ、国の意向を一庶民がどうすることなど出来るわけもなく、俺は聖女に変身し、隣国の皇子の元死地へ向かうことになった。





 それから、見た目美少女ながら性格が激悪の聖女に会い、聖女の姿に変身してみればそっくりすぎてキモイと言われ、傷心のまま隣国ゴーシュ帝国へ移動。

 なお、聖女付きのシスターからは綺麗な聖女様と言われ、羨望のまなざしを向けられた。


 ゴーシュ帝国ではバレることなく第2皇子の婚約者として受け入れられたものの、なぜかすぐにその皇子に放逐され、途方に暮れることに。

 勝手に国へ帰るわけにもいかず何をするもなく、仕事を求めればなぜかオッドアイ皇女の付き人にされる。


 皇女の付き人をしつつ、いつ身代わりなのがバレるかと戦々恐々としている中で、なぜか皇女に懐かれ、戸惑う日々。

 

 めっちゃ可愛い子に懐かれるのはうれしいけど、バレた時が怖すぎる! それと、騙し続けているの状況で心が痛い。

 付き人とは言え皇女付きだから元の生活よりいい生活が出来てはいるんだけど、つれぇええええ!


 誰か俺をこの環境から助けてください! お願いしまぁす! 



 なお、助けは絶対に来ない模様。


 身代わり変身おじさんの未来はどっちだ!?




 ―――――

 終わり



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聖女の身代わりのために【変化魔法】で聖女とそっくりに変身したおじさん。隣国の皇子には捨てられたが、なぜかその妹の皇女に懐かれる。(超短縮版) にがりの少なかった豆腐 @Tofu-with-little-bittern

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