第2話

 1年後の夏、僕は、愛車NSR250Rに乗って北陸自動車道を西へ走っていた。四国を目指して。辺りは漆黒の闇で、深夜だった。

 大型トラックが、やけに目について、時々幅寄せをされた。そんな危険な目に遭いながらも、僕は網の目を縫うように走り抜け、一時、前に車が一台もない状態が生まれた。その時、アクセルを回しギアを上げ6速全開でエンジンの高回転音を耳にしながら僕は走り抜けて風になった。速度メーターは時速180キロを振り切り、回転数はレッドゾーンに突入していた。

 一瞬だったと思う。僕は、風を感じ、風になれた。嬉しかった。


 その年の秋に、僕は、NSR250Rを手放すことにした。そして、YAMAHAのRZ250Rを手に入れた。



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風を感じた夏 沈黙は金? @hyay

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