風を感じた夏
沈黙は金?
第1話
大学時代に僕は、HONDAのNSR250Rというオートバイに乗っていた。2速で、アクセル全開させると腰のあたりが下に沈む感じがして、マフラーから白い煙を放って直線をもの凄い加速で走り抜ける。レース用に開発された凄く危険なオートバイなのである。因みに、1速から2速にギアを上げてアクセルを全開にするだけで、時速160キロ出ていたこともあったので、どんなに危険なオートバイか分かっていただけただろうか?
普段、街乗りでトロトロ走っていると、プラグが湿ってしまってエンジンがとまってしまうこともある。だから、回転数を上げてそれなりの速度を出さないと駄目なオートバイなので、日常生活にあまり適合していないと僕は常々感じていた。
結局、僕は、大学1年の夏休みに、関越自動車道の前橋インターから東松山インターまでの短い区間をNSRで走り抜けるという計画を立てた。
僕の心の中は、楽しみで躍動していた。この計画は、僕だけの秘め事で誰も知らない。とにかく、6速アクセル全開でいけるところまでいってみようと考えていた。胸の奥がワクワクしていて、僕は夏休みを待ちわびた。夏のギラギラした太陽の光の下で僕は風になりたかったのである。
ところが、7月に大学の前期が終わってから、同じ学科の同級生と徹夜麻雀を毎日やっていたため、計画を実行することが中々出来なかった。それに、飲み会もかなりあって誘われれば行っていたので、アルバイトの通勤にNSRに乗るだけで計画が実行されないままとうとう夏休みが終わってしまった。
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