第3話 三重と千葉の海

紀伊長島行きの電車から景色を眺めていると、エメラルドグリーン色のきれいな川が目に飛び込んできた。

地図を眺めると銚子、勝浦、白浜・・・千葉と同じ地名が並んでいる。


「昔から紀伊半島と房総半島は船で行き来しとったんやに」

地元の漁師さんが教えてくれた。江戸時代、急激に増えた江戸の人口に対応するため南紀から漁民が移住し、漁法が伝授されたそうだ。

のどかな紀伊長島の景色を見ていると、子供の頃よく泳いだ房総の海を思い出した。


彼との結婚後に聞いて驚いたのだが、彼の母方の曽祖父は千葉から来た人だったらしい。

全く見知らぬ土地にやってきたと思っていたが、陸と海と人で繋がっていた。

私は四日市の人のさっぱりとした優しさが好きだ。

国や地域では争いが起きるけれど、皆どこかで繋がっているのだと思えたら、少しでも状況は変わるのだろうか。


 近鉄四日市駅付近で買い物をしてから、家族と四日市中央緑地で待ち合わせた。

三歳になる娘が私の姿に気づいて、笑顔で夫と一緒に駆けてきた。

私も笑顔で応えた。

「もうはい着いたん?」         


了  

                               

読んでいただきありがとうございます!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

三重と千葉から 小酒井ナミ @orangesummer723na

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ