0.04 1日目 / 1時限目
魔法薬学の授業は5階の実験室で行った。
俺はルシファーに実力試しと言う体で一番簡単だと言われているヒールポーションの調合をさせられた。
「意外と難しいな」
「あーほら、こっちはあと!先にこれ!」
俺が教えられながら作ったポーションをジャン負けの乃央が試飲し、顔を顰めて言った。
「っ………うぇ、なにこれ不味すぎ。ちゃんと分量合わせて作ったの?風邪薬の方がまだ美味しい」
「お、それでもポーションの効果はちゃんと出ているな」
刹那の指摘に目を向けると、先程まで乃央の目元に濃くあった隈は幾らか薄らいでいた。
「ふむ、味は大切な審査点だ。今のままではヒーラーにはなれないが………きみはその方が都合が良いだろう?」
乃央の様子を見ていたルシファーがそう言ってきたが、その通りだ。ヒールで人を傷つけることはできない。故に戦闘向きではない。
「先生、都合が良いとは……?」
ルシファーに台詞に違和感を感じたのか、ピンク頭が恐る恐るといった様子で尋ねた。
ルシファーはそれに対して怪しい雰囲気の笑みを浮かべただけで何も言わなかった。
つかそんな反応だと余計怪しくないか……?
ああほらピンク頭も困惑した表情を浮かべている。
でもまぁ、どうなったとしてもルシファーがなんとかしてくれる…………だろうか。
簡単に人を信用しない。
直ぐに人を頼らない。
それが例え親だったとしても。
10年前、そう決めただろう?
そして半年前、文字通り身を持って体験しただろう?
自分のことは自分で考えて決めて、なんとかする。
17年前の失敗で懲りたはずだ。
…………『17年前』?
「織笠くん?」
ルシファーの声が脳内に響いた。
「…………先生」
「ぼーっとしていたが、大丈夫か?誰か保健室に」
「平気です」
俺はルシファーに被せるようにして言った。
人を、信じない。
「そうか。体調悪いなら直ぐに言えよ。じゃあ次は悪魔召喚学の授業だ。このまま実験室でやるから教科書持ってきていないやつは休み時間中に持って来い。以上」
返事はしなかった。
はっきり言って、ルシファーは怪しい。何故悪魔がソテラスの理事長をしているのか。ルシファーを召喚した人は誰か。何故ルシファーであることを隠しているのか。何故俺の敵討ちに協力しようとしているのか。何故…………
「………いき………結樹!!」
再び誰かの声が頭に響いた。今度は刹那だった。
「……なに?」
素っ気なくならないように気を付けながら微笑みを浮かべて顔をあげる。
また考え込んでしまっていたようだ。これからはもっと気をつけないと。
「なに?じゃねーだろ。顔色悪いぞ。腹壊してんのか?」
「別に平気だよ。えっと、どの悪魔にしようかな」
「悪魔召喚はしたことあるのか?」
「ないけど」
「これも初心者なのか。それなら負担の少ないこの辺りが良いと思うぞ」
確かに刹那が見せてくれたページの下級悪魔なら、魔法陣も簡単だし、楽に召喚できそうだ。
だけど俺が気になっているのは…………
「なぁ、此奴は?この狼みたいな」
「此奴は伝説の悪魔、ラノンだ」
「伝説の悪魔?」
かの有名な紅白ボールを投げるアニメみたいだ。
「ああ、伝説の悪魔ラノン。召喚に成功したことがある者は一人しかいないらしいぞ?」
「なんで召喚が難しいんだ?」
「そりゃあ魔力足りないからだろ。人は魔力を使いすぎたら最悪死んじまうからな。今じゃ禁止されてるけど、昔は生贄の魔力を使って召喚することもあったらしいぜ」
伝説級悪魔、ラノン
やはり何処かで聞いたことがある。思い出せるはずだ。
「ラノンを召喚する」
俺が呟いたその言葉はクラスメイトの話す言葉の隙間で教室に響いた。
実験室にいる全員がこちらを見ていた。
沈黙が痛い。
「は、お前、何言って」
「……なんてね」
俺は悪戯っぽく笑みを浮かべて見せた。
それを合図とでも言うように急にクラスが元に戻った
「っはは、流石にラノンを召喚するとかないよな」
「俺は魔力とかそんなにないしね」
「んだよ驚かせんなよー」
半分は本気だったんだけどな。
…………でもまぁ、機会があればまた後でもいいや。魔力不足で死んでも仕方のないことだ。
その後俺は初心者向けにと進められた悪魔を何故か一匹も召喚できないまま2時限目を終えた。
悪魔紅戦_Demonroad Laila @REN_REN_0318
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