違和感
心理学のクラスを取り始めてから、その膨大な読書量に圧倒される日々が続いた。図書館で過ごす時間が増え、教科書の内容をシンプルにまとめようとノートを取っていたが、なかなか頭に入ってこない。読んだページの9割は翌日には忘れてしまう。これは至極当然のことかもしれないが、内心、自分の勉強方法が間違っているのではないかという疑念が頭を離れなかった。しかし、その正しい方法も見つけられず、ただひたすらに繰り返し読むしかなかった。反復で覚えられるかもしれないと思いつつも、一回読み通すことさえも精一杯で、時間が足りなかった。
そんな中で迎えた中間試験は、生涯の学生生活で初めての「持ち帰り試験」という形式だった。言い換えれば、「カンニングがOKな試験」だ。教科書を見れば答えがわかるはずだったが、これがなかなか見つけられない。「持ち帰り試験」ほど難易度が高いものはないと実感した。結果は惨憺たるD。この成績では専攻科目の再履修が必要となり、私の留学生活における大きな挫折となった。
この経験は、私の勉強方法に対する自信を完全に揺るがせた。あれほど一生懸命に取り組んできたのに、結果が伴わない現実に打ちのめされた気持ちだった。心理学を専攻として選んだ以上、この分野で成功したいという強い思いがあっただけに、その挫折感はひとしおだった。
図書館で勉強している時間が増える一方で、成績が落ちているという矛盾に違和感を覚えていた。これは、明らかに勉強の方法が間違っている証拠だ。テストは基本的に教科書から出題されるが、そのすべてのページが出るわけではない。範囲内には出題されない項目も多いのだ。
私の大きな弱点は、テスト範囲の中で出ない箇所に興味を抱き、そこに時間を多く費やしてしまうという点だった。これはもはや、一種の「スキル」と言ってもいいくらいに、自分の行動パターンに深く根付いていた。教科書の隅から隅までを読み込むことに執着し、テストに出る可能性の高い重要な部分を見逃してしまうのだ。
この不毛なサイクルに気づいてはいたが、なかなか抜け出せないでいた。勉強している時間に比例して成績が上がるのが理想だが、私の場合はその逆だった。読書量が多くなればなるほど、成績が下がっていくという現実に直面し、自分の勉強方法に対する自信が揺らいでいた。
それでも、自分の弱点を認識することが第一歩だと信じていた。これからは、より効率的な勉強方法を見つけ、重要な部分に集中するスキルを身につける必要がある。挫折を乗り越えるためには、自分自身を見つめ直し、行動パターンを改善する努力を惜しまないことが重要だと心に誓った。このパターンは卒業まで続いた。
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