金色に輝く演奏者
依楽
輝いていた
くるり、くるり。
ひらひらと華やかなドレスが舞う。
綺麗なものだけ集められたような、そんな綺麗なパーティ。
厳か、とまでいかなくとも、落ち着いた雰囲気の会場。
そこで音を奏でるのは、私である。
あちらを見れば、貴婦人たちが和かに談笑をしている。
こちらを見れば、紳士たちが政治の話を皮肉混じりに話している。
周りの空気を読みとって、場を確認し、正しい音を発する。
それが私の仕事だ。
私はこの仕事にやりがいを感じる。
この仕事が人生そのものとも言えるだろう。
ふと、下を向くと、親とはぐれてしまった少年がいた。
私は、声を発し親を探そうと思った。
だが、それをしてしまうと正しい音ではなくなってしまうではないのか?
そう思うと、どうも声が出せなかった。
すると横の失敗作から声が発せられた。
「この子の親御さーん。どこにいらっしゃいますかー」
間抜けな声だ。
私はつい小声で
「お前馬鹿じゃないのか。私たちは正しい音を発することを求められているんだぞ。」
と言ってしまった。
すると失敗作は、
「は?困った人がいたら助けるのは当然だろ!!」
とか、こいつは馬鹿じゃないのか。
正しい音以外を出せば私たちは、
折檻される。
何故って?私たちはそう動くように命じられているからだ。
何故って?それが私たちにとっての摂理だからだ。
こいつは前々からその命に背いて余計なことをする。
馬鹿だ。
そんな目を向けていれば、迷子になった子供の親がやってきた。
「おい!お前どこ行っていたんだ!!」
「そうよ!人が多いのだから離れないようにと言ったでしょう!馬鹿者!!」
「そこの楽器も馬鹿だ!余計な声を出すな!」
はぁ、やっぱりこうなる。
ただあいつは、馬鹿者だった。愚かだった。
「でも自分が声を上げなければ見つかりませんでしたよね?」
すると、親は顔を真っ赤にし、
「楽器如きが口答えをするな!!失敗作め!!!!」
と激怒して、ドスドスと足を踏み鳴らして、去っていった。
「なんだよあいつ。せっかく教えてやったのに。失礼だな。」
「口答えしなきゃまだ良かったのに。」
「私たちは正しい音を発することを求められてるから、それだけすれば良いじゃない。」
はぁ、と深いため息をつくと、
「お前さーいつまでそんな堅っ苦しく生きてくの?」
「てかお前も気づいてるよな?」
「何に?」
「楽器って呼ばれてる時点で気付けよ…」
「自分ら、演奏用アンドロイドなんだぞ?」
そう言い放った、失敗作のことを今初めてしっかりとみた。
金色に輝いていた。
そう、物理的に。
金色に輝く演奏者 依楽 @iraku
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