おしなべて地獄

功琉偉 つばさ

おしなべて地獄

『初めより おしなべての上宮仕へしたまふべき 際にはあらざりき』


『おしなべて』と聞いて源氏物語の一節が思い起こされる。


この一節の意味は『(桐壺更衣(きりつぼのこうい)は)初めから普通のおそば勤めをなさるような(低い)身分ではなかった。』


ここでの『おしなべて』は一般の、ありきたりの、平凡のという意味で、

普通の と訳されている。


『おしなべて』→『押し並べて』


なにかものを押し並べて平らにしたように、全て、一様にという意味で現代では使われている。


『おしなべて地獄』


と聞いたときに先に思いついたのは古文の『おしなぶ』の活用形としての『おしなべて』だ。


あまり日常では使わない言葉だと思う。


そう考えると… 

源氏物語のとおりにいくと

『おしなべて地獄』

とは『ありきたりの地獄』という意味になってしまう。


ありきたりの…普通の地獄とはどのようなものだろうか。


閻魔大王様がいてそこで前世の行いから天国と地獄に分けられ、鬼に連れられていくのが地獄…

そう思うのではないだろうか。

針の山や灼熱地獄…などとおぞましい光景が目に浮かんでくる。


地獄と聞いたら『蜘蛛の糸』、『じごくのそうべえ』

を思い浮かべる。


だけど…どれもしっくりこない。

ということは現代語訳の『全て、一概にして地獄』


なにか違う。

全て一様にして地獄ということは地獄と呼べるような場所がいくつかあるということになる。



そして今この文章を書きながら気付いた。

『おしなべて地獄』とはきっとこの事を言うのだと。


僕の周りには提出物といったたくさんの課題がある。

数学、論国、古文、英コミ(英語コミュニケーションとかいう大変な教科)、論表…

たくさんのワークに暗記になければいけない文法、単語、用法。

更になぜかやらされる総合の時間のレポートたち。


そして途切れぬことがない次々に迫ってくるテストたち。

また休みがない部活。

「高校生の宿命だ。」

などと大人は言う。

みんなそれを乗り越えてきたと。

しかしこの日常に潜む困難、地獄はまさに

『おしなべて地獄』

とでも言えるのではないだろうか…


『おしなべて地獄』

この学生たちへの理不尽な状況。まさに言いえて妙である。



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