2.被人身売買

先ほどこの目の前にいる美少女を殴ってしまったのであろう私は今、路地裏の木製の檻の中にいる。なんでこうなったかの原因は、さっき私が殴った女の子にあったのだ。


彼女があんなに偉い人だとは思ってもみなかった。思ってても殴ってたのは内緒だゾ。事故だからね。そう、彼女の正体とは、ズバリ!魔王だったのである!


ん?何故わかったかだって?ふっふっふー、それはね、殴った時のその横にいた偉そうなおっさんが、大声でこう言ったんだよ。魔王様ーーーーって。フフッ、笑えるでしょう?...はあ、やっぱ笑えねえ。


ただ、お前たち読者共の面白さとは別に、いま私はオークションにかけられ、売れ残りとして道端に捨て置かれている状態だ。普通王様を殴った奴なんて誰も欲しくないだろうね。いやもしかしたら一部の強面オジサマたちには需要があったり?でも鏖殺されるから欲しくないか。拘束具を壊すのは目に見えている。


それはさておき、この間にでも君たちの待っていた自己紹介でもしようか。


私は、神木 歩(カミキ アユミ)十六歳の超絶美少女だ。異論は認めない。絶対に、だ。


少し前に力が強いと言っていたが、どれくらいのものなのかと言うと、鉄棒で逆上がりをしようとして、その鉄棒を握力でへし折ってしまうくらいだ。うん、君たちの言いたいことはわかる。だが言わせないよ。

「ゴリラじゃん!」


とはね。言ったら鏖殺するよ♥。


そうこうしているうちに私の前に一人の青年が現れた。その青年は、私をじっと見てから。


「おじさん、この子、もらってもいいか?」


と、私の隣で居眠りをしていた番人のようなおじさんがいた。まったく気づかなかった。おじさんは、青年を見るなり、顔をしかめて言った。


「ゲッ、よりによってあんたかよ。金は要らねぇからこいつ持って失せろ!お前みたいなやつから金をもらっちまったらこっちも商売が成り立たねえんだよ、この魔王殺し!」


唾を吐きながらおじさんはそういった。


檻が開くなり外へ出てみた。気づいてはいたが、やはり異世界とやらに来てしまったのだろうか。私が、ぼーっと突っ立っていると、青年が私の目の前に来た。青年は、右目を髪の毛で隠していたが、私にをわかる。この人、イケメンだ。


「俺は、コルト・ローズだ。よろしく。あんたは?」


「私は、神木 歩。よろしくといいたいけれどここはどこ?やっぱり私、転生したの?」


「あぁ。そうだ。ってことだよろしく。歩」


そう言ってコルトは手を差し伸べてきた。がっちりと握ったその手は、どこかで握ったことがあるかのように懐かしい感触がした。


道中私たちを見る目が目立った。ある人は、


「あの子、かわいそうだな。死んじゃうのかな。」


と言ったが、それを無視して私はコルトについていった。


しばらく歩いて、魔王城らしき建物から遠ざかり、町の郊外に出た。


近くには建物はなく、がれきが目立っていた。ところどころに廃墟もある。しかし、その中に、小さな二階建ての建物がぽつんとたたずんでいた。外観はきれいで、魔王城の近くからとってきたかのように不自然だった。


コルトは、その建物に近づいて、重そうな扉をゆっくりと開けた。すると、中から顔だけを出したきぐるみの薄金髪ロリが飛び出してきて、コルトに抱きついた。


「おっ帰りー!どうだった?いいこゲットできた?」


コルトは何も言わずに少女の言葉にうなずいて私を見せた。その瞬間彼女は目をキラキラとさせて、駆け寄って来て、大声で叫んだ。


「すっごーい!人間の耳だ!っていうか、人間だ!珍しぃーっ!ねぇ、君名前は?あるの?ないの?なかったらつけてもいい!?」


戸惑いを隠せない私を見かねたコルトが大きくため息を付いて言った。


「歩っていうらしい。そう呼んでやれ」


と言った。


「へぇ~っ、変わった名前だね。エリーの自己紹介もしようか。私は...まぁ、エリーって読んで!」


「あ、っあ、うん、わかった。よろしくね。エリーちゃん。それからコルト、、さん?君?」


「コルトでいい」


こうして私の売買は成立して、ここから私のコルトたちとの異世界生活がスタートするのであった。

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