第11話〜苦痛〜
次の日、大河が全員を集め緊急会議を開いた。
「悪いが、状況が変わったからこの先について話す」
誰もが固唾を飲んでいる。
「議題としては2つ、1つは脱出について、もう1つは今後ゆうとをどうするか…だ」
「まりさん、大丈夫?」
「……はい、大丈夫…です…」
まりさんはどことなく上の空だ、しかしそれもしょうがないだろう。
ゆうくんをこの先どうしたら良いか分からないのだから。
「…先ずは脱出について、このまま居ると犠牲者を増やしかねないから本腰を入れて出口を探す」
大河の中ではこれ以上、犠牲を出す事は許されないのだろう。
「これからは、待機組を作らず1人を残し他全員で出口を探す、しかし連絡が取れないと困る、そこでこれを使って連絡を取り合う。」
机の上にトランシーバーが人数分置かれた。
「これは先日、遠くの職員室らしき場所で見付けたものだ、使用確認はしてある」
各々手に取り、確認している。
「今日は…矢口まり、あんたが残れ。」
「……分かりました」
やはり、ゆうくんの事を気にかけてだろうか?
無理もないだろう、似たような症状が出てしまったのだから。
「そして、ゆうとについて」
まりさんの方をちらっと見るが、俯いて居て表情は見えない。
「…昨日も話した通り、感染が進めば殺す…それしか手が無いと判断した」
分かっていた、分かってはいた…が、無慈悲な言葉にどうしても耐えられなかった。
「待ってくれ、他に方法があると思う」
「…じゃあその方法は?」
………何も…思い付かない。
「感情だけで話すな、死ぬぞ」
悔しかった、言いえぬ悔しさがあった。
無力さを感じ、手を握る。歯を食いしばる。
「とりあえず、ゆうとが目を覚ますまではこの7人で探索する、以上、行くぞ」
そう言うと、たいがは教室を出て行く…それに続く様に皆教室を出て行く。
「まりさん…」
「………大丈夫、あいらさんは探索に行って?」
…作った様な笑顔だ。
「…無理、なさらないで下さいね」
「…大丈夫よ、これでも母親だから、よく言うでしょ?母は強しって…さ、ほらほら!置いて行かれるわ!お願いするわね、あいらさん」
肩を押され教室の外へ出る、扉越しに啜り泣く声が聞こえる。
俺に出来る事はやはり何も無いのだろう…
『こちら虎、探索を開始する、各自探索を開始、オーバー』
トランシーバーから声が聞こえた。
「…………よし」
覚悟を決め、歩み始める。
必ず、出口を見付けて皆揃って脱出するんだ。
デッド・オブ・ディメンション 黒虎 @kuroko0521
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