輝の決意

 試合の後、輝は宇都美が自分から遠ざかる理由を理解できずにいたが、彼女を放っておけない強い思いと彼女に嫌われることの恐怖から、再び彼女の家を訪れる決意を固めた。今度は彼女の母親に真剣に話を聞いてもらい、宇都美が抱える問題の本質に迫ろうと試みた。


「お願いします。宇都美が何を悩んでいるのか、僕には理解できないんです。宇都美が元気なくなっていくのをただ見ていられません。」

 宇都美の母親は輝の真剣な態度に心を動かされ、宇都美と会う時間をもらった。


「宇都美、最近どうしたの?学校にもあまり来てないみたいだし、来ても俺を避けてるよね?」


「そんなことないよ。ただ体調が悪いだけ。心配してくれてありがとう、もう家とか来なくていいからね。」


「宇都美、俺なんか宇都美に悪いことしちゃった?してたんだったら謝るごめん。でも自分では何しちゃったかわからないんだ…。もしそうなら教えて欲しい。」


「輝は悪くないよ。悪いのは私。でも輝の顔今は見たくない。」


宇都美はそういうと輝を家から追い出した。輝は宇都美の拒絶に絶望しながら家路についた。何が原因か分からなかった。もしかしたら病気のせいで、気付かないうちに気づつけてしまったのかもしれないと自分の病気を恨み、無力感にさいなまれた。

 彼は帰路の途中の公園のベンチに座り、自分の病状と彼女の行動について考え込んだ。しかし、どんなに考えても答えは出てこなかった。


「俺はどれだけ宇都美の顔見たくても見れないのに…。」

 小さく呟いた言葉はもう温かくなりつつある夜の空に消えていった。彼女がその理由を明かさない限り、輝にはどうすることもできないのだった。

 輝は一人で深く考えた後、宇都美の気持ちを尊重することに決めた。彼は彼女が自分 のペースで全てを乗り越えるのを待つことにした。輝は、宇都美が再び彼と話す準備ができたとき、いつでも受け入れると心に誓った。輝は、宇都美との関係は一時的に距離ができるかもしれないが、いつの日か再び心を通わせることを信じていた。

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幻影の彼方-青春の狭間に枯れゆく決断- @nns_most

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