第7話 超覚醒!その名はエスターク
「……で? どうするのだ? 本当に“頭が良くなる”効果なんてあるのだ?」
確かに。
思いがけず俺の処女作が初っ端から大きく予想を超えてゴールデンポーションになっちまったしなあ~。
しかし、本当に頭が良くなってしまうポーションだったら凄くない……ね?(チラリチラッ)
「そ、その目は何なのだ! まさか…パラスで試そうとしているのだ? とんだ外道なのだ!?」
チッ! どうやら彼女は協力的じゃないみたいだな…どうする?
かと言って自分で試すほどの勇気が俺にあったならば、前の世界では、きっと陽キャで彼女もいて人生明るかったに違いない(※偏見)
「マイ・マスター。御心配であれば、ワタクシが鑑定致しますが」
おお! そんな機能があるならもっと早く言って欲しかった。
頼むわ、オナポット。
*ピピピッ! キュィーーーン*
「解析作業完了。そのポーションの主な効能は、“賢者の如き叡智を得られる”です。そして、副作用としては―― *ピッ ガガガガガ* …………特に問題はありません」
「妙に間がなかったかなのだ?」
確かにちょっとビジー状態になってたぞ、オナポット。
ポーションの効果もなあ…賢者の如き叡智ってのも怪しいしなぁ~?
「因みに。作成したポーションですが、栓を開封した状態が計3分を超えますと急速に酸化が進行して効果を失い、完全に発酵して別の黒い液体になってしまいますので御注意下さい」
え。そんな速攻で発酵すんのコレ!?
パラス! 何かコルク栓か蓋みたいなモンないの!?
「急に言われても無いのだ! というか、そんな仕様聞いたことないのだ。やっぱり紛い物なのだ!」
え~ダメになっちゃうのは流石に勿体無いだろ~。
俺だってほんの少しだが自分のポンチ脳が良くなればとは思わなくもないが、怖いものは怖い!
…いや、別段絶賛使い道に困ってる代物ではあるしな?
材料にしちまった誰かさんの脳味噌には悪いがこのままオジャンになっても…ん?
……干物が入ってた麻袋。
…何か、モゾモゾ動いてないか?
俺がそれに気付いて麻袋に手を伸ばした瞬間――何か
まさか…い、異世界にもヤツが…!?
じっ、じじじっ…Gぃイイイイイイイイイィイイイ!?!!(の食卓)
ポーションをブン投げなかった当時の俺を自分で褒めてやりたいくらいの衝撃的な遭遇だった。
「何を騒いでいるのだ? ただの蟲なのだ!」
む、ムシタイプつっても全ての存在が許されるわけじゃないんだぞ!?(半泣き)
ゴキだけは別次元から俺達の世界にやってきた
「情けないヤツなのだ…多分、死んでた蟲が生き返っただけなのだ」
い、生き返ったあ?
何とか冷静さを取り戻してその物体エックスを観察すると、それはクワガタムシに酷似した昆虫だった。
呑気に椅子にとまってノロノロと動いていやがった。
良かった。どうやらどっかの火星でやらかした連中ではないようだな…ふぃ~。
しかも、パラス曰く、薬作りで蟲は良く使われる素材らしい。
特にこのクワガタムシらしきものは、南国産の
死んだと思っても数年後に息を吹き返すことがざらにある謎多き生態で、一説ではこんな少年時代の夏休みの象徴が数百年も生きているんだとかどうとか。
が、待てよ?
この小屋の中ではこのポーションを試せる生き物は…俺とケモ娘とこのクワガタムシだけということになるのでは?
…………。
そういや、ポーションって飲むものなのか?
それとも直接使用者に振り掛けても効果があったりする?
「魔法薬は基本的にどちらでも問題ないはずなのだ。お前、まさか…なのだ」
俺は特に躊躇うこともなく久々に娑婆の空気を堪能していたゾンビートル先輩に黄金ポーションをどばぁーっとぶっかけることにした。
一瞬、小屋の中に気不味い雰囲気と静寂が訪れる。
しかし、被験者の変化は急激だった。
――突如としてクワガタムシから七色の光と共にイナズマチックな演出によって空間が虹色の輝きで満たされ、俺は思わず身体を低くして床に伏せた。
光が消え去ると靄が漂い、衝撃でものが散乱した小屋の中の椅子に1匹の
「蟲が金ピカになったのだ!?」
「*ピッ ガガッ* 特に副作用またはデメリットと考えられる効果は認識できません」
いやいや完全に金メッキされとるが!?
そうか、
はぁ~うっかり自分で試さずに良かった。
この令和の時代に黄金〇ットになるところだったな?
個人的にはゴールデンパラスにも少し興味があったが…(悪)
「おおっ!? 何という甘美なる知性の目覚め! 怒濤の如く流れ込む我に流れ込む知識の奔流よ!!」
「しゃ、喋ったのだ!?」
おいおい? パラスさん、そのリアクション本日2回目ですよ?
まあかく言う俺も、急にクワガタムシが激渋オッサンボイスで喋り出したもんだから膝がガックンガックンなってるけどな!?
流石の異世界でも、さっきまでブーンブーン飛んでた昆虫様が流暢に喋り出したら誰でも腰抜かすだろ…。
「むう! 貴殿だな? 我にこの素晴らしき力を授けたのは!?」
ヒィ!? 飛んで来て俺の肩に引っ付きやがったああああ!?
た、助けてくれパラス!?
あ! また薬棚の上にひとりだけ避難してやがるぞ!
「まだまだ人の言葉と知識に馴染むまで時間が掛かるだろうが…無駄に長く生きていた中で最も素晴らしき日だ! 貴殿は我にとって大恩人である。こんな我でも役に立てることもあるだろう。どうか、我に名を与え、側に従えて欲しいのだ!」
いや、もう俺より頭良さ気だよ?
知性のインストールはすこぶる順調そうだ。
…そ、そんな前脚を擦り合わせて頼み込まれてもなあ~。
でもやった責任があるもの事実。
自分よりも頭の良いかもしれないペット(複雑)と思えばいいのか?
う~ん名前ねぇ。
黄金のボディに屈強な
「何と!
俺がテキトーに付けた名前を新しく仲間になったクワガタムシが偉く喜んでくれました。
異世界で一番雑なポーションの作り方 森山沼島 @sanosuke0018
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