第2982話 面白い大道芸。


(この一撃を放ったら、俺はもう動けねぇ。ブレスレットだけ叩き潰せば……元のアダムに戻る……そういう単純なオチであってくれよ、頼むからぁあああ!)


 祈りながら、センは、

 ブレスレットに、龍閃崩拳を叩き込んだ。


 避ける気がなかったアダムは、

 その攻撃をモロに受けた。


「っ……っ?!」


 センの拳がブレスレットにあたった一瞬、

 そこで、アダムは、ようやく気付いた。

 自分の防御システム全般がダウンしているということ。


 そして、気付いた時にはもう遅い。

 センの龍閃崩拳の波動は、一瞬で、アダムの全身を駆け抜ける。


 パァアアアアアンッッ!!


 と、跡形もなく、木っ端みじんに吹き飛んでしまったアダムの全身。


 それを見て、誰よりも驚いていたのはセン。

 センは、目をひんむき、鼻水を垂らして、


「でぇええええええ?! ブレスレットだけ壊す予定だったのにぃいい! でぇえええええ?! ちょまっ……えぇええええええ?!」


 簡単に言えば、センは、まだ、オメガバスティオンという概念を使いこなせていない。

 1億年かけて磨いてきたが、たったそれだけで会得できるような安い技ではなかった。

 もっと言えば、1億年かけてもマスターできないぐらい、センが無能だった。


「アダム! だ、大丈夫だ! 『反魂の神聖式』っていう、死者蘇生の手法がある! やったことはないし、死ぬほど難しい秘術だが、どうにか、頑張って会得して、蘇生させるから、だから、ちょっとまって――」


 と、パニックになりながら、そうわめいていると、


 バラバラになったアダムの体が、

 まるで、逆再生みたいに、元のすがたへと戻っていく。


 数秒程度で、完全に、元のアダムに戻ると、




「……驚いたな。貴様の大道芸は、『私の技』だけではなく、『防御系統のシステム』まで無効化できるのか……貴様は、本当に面白い芸人だな」




「……え……なんで……どうやって、生き返っ――」


「一つだけ、面白い事実を教えてやろう。私は『無限蘇生』というプラチナスペシャルを持っている」


「……無限……蘇生……」


 『スペシャル』と言われている『ユニークスキル』の中でも、

 最高峰にランク付けされている『プラチナスペシャル』。


 センが保有している『不屈の魂魄』もプラチナスペシャル。

 そんなプラチナスペシャルの中でも序列はあって、

 センの『不屈の魂魄』が最下級クラスで、

 アダムの『無限蘇生』は最高峰クラス。


「ん……おっと、別に暴露のアリア・ギアスのつもりで言ったわけじゃないが、ステータスがちょっと上がったな」


 などと、自分の能力上昇を確認してから、

 アダムは、あらためて、センに視線を向けて、


「存在値も、戦闘力も、スペシャルも、すべてが完璧な究極超邪神。それが私……アダム・クリムゾンなのだよ、センエース」


「……」


「別に暴露を積む気はないが……あと、もう一つだけ教えてやる。先ほどの貴様の一撃で、貴様の狙いどおり、ブレスレットは破壊された。……『私の力を縛っている手かせ』を砕いてくれてありがとう」


「……へ?」


「究極を超えた邪神が、存在値1兆程度なわけがないだろう。面白い大道芸を見せてくれた礼に、私の全力をお見せしよう。存分に、瞠目(どうもく)するがいい」


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