第2981話 オメガバスティオンの応用技。
(圧倒的上位者であるお前は、『赤子に等しい俺』と『正面から殴り合うこと』はできない。いなして、あやして、小ばかにして、全部やってから、アクビ交じりに踏みつぶす――それ以外の手はとれない)
『武人のプライド』という邪魔なおもり。
そこに活路を見出していくセン。
今の自分にできる全部をブッパして、センは『可能性』を奪い取ろうとする。
「真・武装闘気5!!」
さらに加速していく。
覚醒系の魔法で、自身のステータスを底上げする。
とにかくパワーを。
ただただパワーを。
・『カースソルジャー』は、『相手の攻撃力を吸収して、センに渡す』というタイプのデバフをぶちこんだ上で配置した。
・『毘沙門天の剣翼』は、『展開中、使用者の攻撃力が上がる』というバフのために展開させた。
・『エグゾギア』は、魔法系統と防御系統のシステムをあえてダウンさせて、攻撃力を上昇させるというアリア・ギアスを組み込んだ上で起動させた。
――すべては、この一撃にかけるため。
アダムはバカじゃない。
戦闘思考力はむしろ高い。
だから、
アダムは、センに対して、
「火力はなかなかの仕上がりだな。『一瞬の煌(きら)めき』とはいえ、3000億相当にまで上昇している。すごい、すごい。それなら、私にダメージを与えることも不可能じゃない。まあ、そうだな……その火力で……8000発くらい殴られたら、さすがの私も、死ぬ可能性が、なくはないかな」
嘲笑(ちょうしょう)しながらそう言う。
その言葉に嘘はない。
『センの火力』と、『アダムの耐久力』を計算すると、
確かに、数千回は攻撃を与えないと、殺しきることはできない。
「記念に、一撃だけは受けてやる。さあ、くるがいい」
そう言って、無防備をさらすアダム。
――アダムが、そうすることも計算した上で、
センは、
(……オメガバスティオン……)
無詠唱で、その『概念』を拳に込めた。
コレだけは、バレるわけにいかない。
だから、当然、暴露のアリア・ギアスも使わない。
姑息に、狡猾に、醜悪に、卑怯に、
センは、『卑劣なチート』を、アダムにぶちこむ。
(……オメガは何も教えてくれなかったが……ずっと、『撃ち込まれ続けた』から……『理屈』を理解し、『やり方』を盗むことはできた……)
まるで、古い『職人の修行』のように、
ひたすら、近くで盗み見て、センは、その『応用技』を会得した。
(相手の攻撃の波長に完璧に合わせることで無効化するという理論をそのまま使い……アダムの防御システム全般に波長を合わせて無効化する……っっ!!)
8000回攻撃しないと死なない――それは事実だが、それは、アダムの膨大な防御力を計算に入れた上での話。
防御力がゼロの状態なら、
「――龍閃崩拳(りゅうせんぽんけん)っっ!!!!」
迷いなく、センは、今の自分に出来る全力の一撃を、
アダムの『ブレスレット』に向かって叩き込んだ。
この全力は、本当のフルマックス。
オーラと魔力を、限界ギリギリまでぶちこんだ。
もう、この一発を放ったら、動く事さえままならない――そのぐらいの覚悟を込めた一撃。
(この一撃を放ったら、俺はもう動けねぇ。ブレスレットだけ叩き潰せば……元のアダムに戻る……そういう単純なオチであってくれよ、頼むからぁあああ!)
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