第2978話 俺は永遠に終わらない。


「……くく、虚勢も、そこまで大きくはれれば大したものだ」


 最後にそう言って、

 アダムは、大量の光球を、センに向かって突撃させた。

 一発一発が即死級の火力を誇る光の球。


 そのスコールに対し、センは、


「――オメガバスティオン――」


 自分の中に深く没頭し、

 自分の身に降りかかる光球の全てに対して波長を合わせていく。

 おそろしい集中力を必要とするエゲつない神業。


 防御に回していた毘沙門天の剣翼はコナゴナに砕け散った。

 流れ弾で、100体のカースソルジャーは壊滅した。

 リソースの全部をオメガバスティオンに集中するため、エグゾギアを解除した。


 裸一貫、身一つで、アダムの猛攻撃を受け止めるセン。


 最初からずっと、頭クラクラしているが、

 センは、大量の鼻血を垂らしながら、

 完全に『ガン決まった目』で、

 必死に光球を処理していく。


 数秒後、光球のスコールがやんだ時、

 そこには、髪が真っ白になって、一気に老け込んだように見えるセンが立っていた。

 3歳児には見えない、小さな老人と言った感じ。


「まさか、本当に防いでみせるとは……本気で驚かされたな」


 『己の集中力に殺されかけているセン』に、

 アダムは、


「煉獄光球ランク800」


 また、同じ魔法を使って、大量の光球を出現させる。


「センエース、貴様の根性が図抜けているということは、よく理解した。面白いから、最後まで付き合ってやる。さて、私の煉獄光球を何回、防げるかな?」


「……何回? ……バカが……まだ、わかってねぇのか……」


 真っ白に死にかけているセンエースは、

 しかし、それまで以上の気迫と殺気を眼球に込めて、


「お前を救い終えるまで、俺は永遠におわらねぇんだよ」


「貴様の望みどおり、少しだけ恐怖を覚えてやるよ、センエース。貴様の気持ち悪さに対して、背筋がゾワゾワしている。まさに鳥肌もの。貴様は気持ち悪い。臓物をぶちまけたゴキブリにも劣る」


 そう言い捨ててから、

 アダムは、光球を突撃させる。


 センの脳内は、完全に、出来上がっていた。

 一ミリたりとも絶望には染まっておらず、

 ただ、ひたすらに、目の前の光球を消滅させることだけに没頭している。


 ――と、その時、




『時間だ、センエース。今日の分のナイトメアゲートが開くぞ』




 そんな声が、頭の中で響いた。

 その直後、センは、いつもどおり、

 ――ゲートの中へと引きずり込まれる。


 親の顔より見た光景。

 頭が完全におかしくなるほど慣れ親しんだナイトメアソウルゲートに戻ってきたセンは、


「ぷっふぅうう……っっ!! あっぶねぇ……っ!! 今のは、たぶん、さすがに死んでた……」


 ヘナリと、力なく、その場に崩れおちる。


「……めちゃくちゃな強さしやがって……存在値だけじゃなく、戦闘力まで高いのは反則すぎるだろ、クソがぁ……」


 アダムに対する文句が止まらない。

 一通り、一人で、思いを吐露してから、



「……ん……ま、とりあえず、治療ルームだな……」



 もはや、慣れたもので、

 治療ルームのカプセルに入り、

 体を完全回復させるセン。


「ああ、よかった、髪の色、もどった……さすがに、3歳で白髪は精神的にキツすぎる……」

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