第2977話 数秒の時間稼ぎ。


 センは、とうとうと、オメガバスティオンについての情報を語っていく。


「……もちろん、それじゃあ、話にならないから、このチートを実戦で使えるようにするための努力も積んできた。武の鍛錬と併用して、死ぬほど理論を学習し、命がけの反復練習を積んだことで、『脳がちぎれるほど集中すれば、まあまあの確率で相手の技を無効化できなくもない』――ってレベルまではもっていくことに成功した。ちなみに、この暴露を積んだことで確率がさらに上昇。死に際で、アドレナリンがえぐい現状だと、お前の攻撃はほぼ無効化できる」


 ちなみに嘘である。

 成功したのは、さっきの一回だけ。

 ――センには、この異常に難しい技能を汎用性高く扱えるだけの才能がない。


「なるほど……その大道芸は確かに面白いが、『脳がちぎれるほどの集中』など、そう長いことは持たないだろう。もって数秒、長くても数分が限度。その短い時間、私の攻撃を無効化できたからといって、何がどうなる? 死ぬ時間が数秒遅れるだけだろう? 無駄にあがかず、さっさと死んでおいた方が楽だと思うが?」


「数秒でも時間を稼げるのなら、這いつくばってでも稼ぎつくすさ。その間に、この状況をどうにかする方法を見つけ出す。お前を救い出すまで、俺は止まらない」


「貴様、バカなのか?」


「賢い坊ちゃんに見えるか? 俺はどうしようもなく無能で頭の悪いブサメンのレベル1だよ。おまけに、ドスケベで、女に弱く、親ガチャ運で地獄を見た、マジもんのサイコパスで、普通に友達がいない、あわれで、みじめで、無様で、みっともない……そういう、ほぼ終わっていると言っても過言ではないド変態だ」


 そこで、センは、『覚悟の質』を変えて、


「だが、根性だけは宇宙一だ。この世に、『俺以上の勇気』を叫べるヤツは一人もいねぇ。『アルティメット土壇場マキシマム』な、この『地獄のカマの底』で、俺は、最後まで『それでも』と叫び続ける。そんな俺の『飛びぬけたイカれ具合』に震えやがれ」


「震えるのは、いつだって貴様。私は、常に震えさせる側。その力関係が狂うことはない」


 そこで、アダムは、右手を天に掲げ、


「煉獄光球ランク800」


 バカみたいに高ランクの魔法を使う。

 さすが、存在値1兆は格がちがった。


 煉獄光球は、大量の『光球』を出現させて、マシンガンのような連撃を叩き込む魔法。


「くく……『ちょっとした大道芸が使えるだけの死にかけたアリ』に、いつまでも付き合ってやるほど、私は『根気強い観客』ではない。異次元砲を防いだのは確かに驚かされたが、そのオメガなんとやらは、『一発』を防ぐのが精々の、こすい技だろう? ならば、連撃を叩き込むだけだ。すべてを防げるものなら、防いでみろ。……仮に防げたとしても、私は、この程度の魔法なら、あと、100万回は使えるがな。私の膨大な魔力が尽きるまで、『脳がちぎれるほどの集中』を保てるか?」


「ああ、余裕でな。なんだったら、1億年つきあってやるよ」

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