第2748話 さあ、決着をつけよう。


「なるほど……まあ、お前の場合、それも嘘である可能性はいなめないが……正直、そっちの方がありがたいな。俺とお前の闘いに、あいつらを巻き込むと、いろいろやべぇだろうし。ところで、お前のところには、どうやって行けばいいんだ?」


 ――最初の荒野を覚えているか――


「最初の荒野? ……この世界で最初に目を覚ました場所のことか?」


 ――その上空一万メートル地点に『天の祭壇』というのがあるから、そこで、『今、手に入れた三つの鍵』をささげろ――


「……RPG的だねぇ」


 ――『三つの鍵』をささげたら、そこで呪文を唱えるんだ。そうすれば、時空の門が開く――


「ほむほむ。で、呪文とは?」


 ――一回しか言わないから、ちゃんと覚えろ――


「あいよ。できれば短い呪文で頼む」


 ――オング、ダクタ、リンカ。ネブトッド、ヂン。フングルイ、ムグルウナフ、ヨグ=ソトース、ンガァ・グア、ナ・フルタグン。イア・イア! ヨグ=ソトース、フタグン、イア・イア、ヨグ=ソトース、フタグン――


「……いや、長ぇよ」


 ――これを、一文字たりとも間違わずに唱えろ。そうすれば私と出会える――


「だから、長ぇって。一回聞くだけじゃ覚えられねぇ。あと、7~8回言ってくれ」


 ――その必要はない。貴様は『覚えて』いる――


「はぁ? んなわけ……」


 と言いつつ、センは、先ほど、ヨグが口にした呪文をボソっと口にしてみた。


「……オング、ダクタ、リンカ。ネブトッド、ヂン。フングルイ、ムグルウナフ、ヨグ=ソトース、ンガァ・グア、ナ・フルタグン。イア・イア! ヨグ=ソトース、フタグン、イア・イア、ヨグ=ソトース、フタグン……え、なんで、俺、覚えてるん?」


 魔法やアイテムやアリア・ギアスを使えば、

 一瞬でものを覚えるのは造作もないが、

 今、センは、そんなものは使っていなかった。

 究極超神ではあるものの、彼の短期記憶能力は、常識の範疇に留まっている。

 だから、『聞いたばかりの長い呪文』を、一発で覚えるなど不可能なはず。


(まさか、命に刻まれていた?)


 などと疑問に思っていると、

 そこで、ヨグが、






 ――さあ、決着をつけよう。貴様に私の全てを教えてやる――






 ★






 ――いったん状況を整理するため、

 アルテマ・ウムルを処理した後のセンは、

 一度、裏ダンジョン・ゼノリカに帰還した。


 平に対して『帰る』という一方的な連絡をいれてから、

 『シューリたちを縛っている禁止魔カードの呪い』を強引に解呪した。

 ここでちょっと手間取った。

 禁止魔カードの呪いは、無駄に強固で、

 センを拒絶しまくっていたが、

 『ナメんなよ、クソぼけがぁあああ!』

 と、血管が引きちぎれそうになるほど頑張った結果、

 どうにか、解呪に成功した。

 ハッキリ言って、ウムルを殺す100倍ぐらいの労力がかかった。


 その後、彼女たちに怒られた。

 『無茶をするな』と、シューリにボコられ、アダムとミシャに泣かれ、

 はたからみると、『最低な旦那』が『嫁を泣かしている』ようにしか見えなかったという。


 めでたし、めでたし

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