第2742話 重さ。
楽勝でアルテマウムル・シャドーを蹂躙したゼノリカの面々を、
エアディスプレイで見つめていたセンは、
「……えぐいな……」
つい、ボソっと、本音をつぶやいてしまった。
こうなることを計算していたわけでも、予想していたわけでもなかったので、
凶悪に強化されたゼノリカの面々を見て、普通に引いている。
センは、ふと、『体全体』と『胸の奥』に、
ズシリと、重さを感じた。
だから、思わず、胸に手をあてて、
「……この『重たさ』は……あいつらの想いか……これは、しんどいな……」
そうつぶやいたセンに、
アルテマ・ウムルが、
「……『ゼノリカの想い』が『重たい』というのも事実だろうが、単純に、レベルが1にまで下がっているから、体が重くなっている、という理由もあるな」
優雅に微笑みながら、そうつぶやいた。
「……お前の絶対的精神的支柱が暴走して、ゼノリカは確かに強くなった。私のシャドーごときでは、もはや、肉壁にもなれない。ただ、あいつらが、本体である私を超えているかというと、そうではない。より磨かれた将来のゼノリカなら分からんが、今のあいつらでは、私が張った結界を超えて、貴様を助けにくることは不可能。仮に、結界を乗り越えられたとしても、あの程度の軍では、私を削り切ることはできないな」
ゼノリカは確かに強くなったが、
『究極超神』級の化け物をどうにかできるほどではない。
神の力にも慣れていないし、
単純に研鑽も足りていない。
ゼノリカが真に強くなるのは、ここから先の話であって、
今のゼノリカでは、まだまだこころもとない。
「結局のところ、私の相手ができるのは、センエース……貴様だけだ。しかし、そこまで弱体化してしまったら、もう、私を殺すことは出来ないだろう」
そう言いながら、
アルテマ・ウムルは、
ふところから、魔カードを一枚取り出した。
「とはいえ、私も、先ほどまでの闘いで、ダメージを負いすぎた。そこのイカれた女神どもはザコじゃないからな。決死の圧力をかけられてしまうと、削り切られる可能性もなくはない――というわけで……」
禁止魔カードの使用許可を世界に願う。
ウムルの願いは、驚くほどあっさりと、聞き届けられた。
アダム、シューリ、ミシャの三名は、
『やばい』と認識すると同時、
瞬間移動で距離を詰めて、
ウムルが禁止魔カードを使う前に殺しきろうとしたが、
「いやいや……無理だって。『最後まで殺しあった際』に『削り切られる可能性』は認めるが、貴様らじゃ、私の『アイテム使用をとめる』なんていう、超高度な阻害行動は無理。センエースと違い、貴様らには、『アイテムを使わせない』という訓練が、圧倒的に足りていない」
彼女たちも、センの系譜に刻まれている。
つまり、『センエース化』することが可能。
強大なパワーアップを果たせてはいるが、
しかし、もともと、相当な強さを誇っている彼女たちからすれば、
センエース化による恩恵は、プラチナスペシャルの追加による、
『精神的な耐久性』の増加がメイン。
総合的なパワーアップもしているが、ウムルとの距離を大幅に詰めたかというと、そうでもない。
天下の面々が、センエース化によって受ける恩恵は、
『1』が『1000』になるようなものだが、
彼女たちのばあいは、
『10000』が『11000』になったぐらいのもの。
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