第2743話 とおりゃんせ。
天下の面々が、センエース化によって受ける恩恵は、
『1』が『1000』になるようなものだが、
彼女たちのばあいは、
『10000』が『11000』になったぐらいのもの。
ゆえに、届かない。
ウムルを完全制圧できるほどの力は持ち合わせていない。
ウムルは、スルスルと、華麗に、アダムたちの猛攻を回避して、
「――『とおりゃんせ』――」
そう言いながら、
禁止魔カードを破り捨てると、
「はっはぁああああ!! 何もできない自分の弱さを呪いながら、そこで、指をくわえて見てろ、ぼけぇ!」
アダム、ミシャ、シューリの三名の体が、
まるで、アスト○ンでもかけられたみたいに、
体がかたまって、ピクリとも動けなくなる。
彼女たちの行動が完全停止したのを確認してから、
ウムルは、センをにらみつけて、
「さて、それじゃあ、絶望をはじめようか。貴様の献身も、ゼノリカの覚醒も、全部無駄になる。なぜかって? 私が壊すからだ。自分の愚かさを恨め、センエース。ゼノリカを切り捨てて、完全なる孤高を貫いていれば、余裕で私を殺せた。私という巨悪から、世界を守ることができた。そこで固まっているバカ女共も守れた。しかし、貴様が、ゼノリカという『くだらない箱』に固執して、妙な情を振りまいたせいで、この絶望が出来上がってしまった。貴様は、今から私に殺される。ゼノリカも私に殺される。そこの女共も、私が体力的に完全な状態であれば殺せる。貴様を殺したあとは、体力を回復させるために、いったん、撤退することになるが、回復だけに集中するのであれば、数時間もあれば十分。つまり、貴様は、これから、秒で殺され、貴様が大事にしていたものは、数時間以内に全滅する」
「……」
「何か言いたいことがあるなら、聞いてやるぞ。すきにほざけ。最後の言葉だ。どんな戯言であっても、私の心に刻んでやる」
「……ほんとに、俺のステータス、めちゃくちゃ低下してやがる……レベル1で、攻撃力や防御力なんかの基礎ステも、のきなみ一桁……GODポイントで獲得した基礎ポイントも一桁……えぐいな……また、数値を上げる作業をしないといけないのか……ダッッルゥ……」
などと言いつつも、
その口元はほころんでいた。
頭の中では、すでに、プランが沸き上がっている。
『どうやって上げよう』と考えている時間が一番の至福。
そんなセンに、
ウムルは、
「妄想をするのは自由だが、未来に想いを馳せる権利はないぞ。貴様は、今から私に殺される」
そこで、センは、
ようやく、ウムルに視線を向けて、
「……お前が、俺を殺す? どうやって?」
本気で『分からない』という顔をするセンに、
ウムルは、普通にイラっとした顔で、
「今の虫ケラに等しい今の貴様など、鼻息で殺せる」
「まあ、確かに、俺が『レベルの数値』以外に何もない虫ケラだったら、鼻息で殺せたと思うぜ……」
そう言ってから、センは、
少しだけ、何かを考えるように、視線をそらし、
「……いや、どうだろうな……前にレベル1だった時も、俺、普通にお前を殺せたしな……」
ゼノ・セレナーデで、はじめてウムルと対峙した時のことを思い出しながら、ウムルを煽っていくセン。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます