第2701話 100万回死んだウムル。


 ウムルのフラグメントが、

 ゼノ・セレナーデのセンエースに付き合って、

 100万回以上、全力の殺し合いを続けてきており、

 その道程が、このウムルにも刻まれている、

 ――ということなど、理解できるはずがない。


 丁寧に教えられたとしても、

 言葉だけでは、正確に理解することなど出来ないだろう。

 ゼノでのセンエースは、本当に大変な目にあったが、

 それに付き合わされたウムルだって、本当に大変だった。

 100万回以上、ずぅぅぅぅうううううっと、

 センエースという狂気と付き合い続けてきたのだ。


(磨かれるさ、そりゃ、えげつなく。私はただのシャドーだが、ただのシャドーに、これだけの器をぶち込むことができるほどの地獄を……私の中心は、センエースとともに積んできたのだ)


 正直なところ、ウムルはセンエースに敬意を表している。

 センエースというとんでもないヒーローのことを、

 心の底から敬愛していると言ってもいいかもしれない。


 100万回以上、『高次の対話(デート)』を続けてきた。

 だから、センエースのことは、ここにいる誰よりも理解しているという自負があった、



「私は、貴様らのように、『理解した気になっているだけのカス』とは違うんだ! 真に『センエースを心に抱く私』を! センエースのコバンザメでしかない貴様らが、どうにかできるなどと、ありえない夢を抱くなよぉ!」



 そこから、ウムルは加速していく。

 『恐怖を与える時間』はもう終わった。

 すでに、センは、ゼノから帰還している。


 『本体のアルテマ・ウムル』が『センエース相手に稼げる時間』は、そんなに長くない。

 あと数時間程度がせいぜい。


 だから、ここからは刈り取っていく。

 命を。

 すべてを。


 ――ウムルが加速してからというもの、

 天下の面々が、ぽつぽつと殺されていった。


 盾としての性能がケタ違いに高いカンツとジャミのおかげで、

 一気に殲滅はされていないが、

 一人、また一人と、殺されていく。


 そして、ついに、十席の中でも死者が出た。

 最初に殺されたのはジャクリナ。


「なんだかんだで、貴様の回復と支援が一番ウザったいな」


 そう言いながら、ウムルは、ジャクリナの死角から飛び込んで、

 彼女の首を一撃で跳ね飛ばした。


 続けて、


「はい、スキありぃ」


 クマートゥが半身を削られて死亡。


 徐々に、徐々に、ゼノリカの宝が削られていく。

 ゼノリカが築き上げてきたものが、丁寧に踏みつぶされていく。


「ははは。だんだん、お仲間が減っていくなぁ。大丈夫か? 寂しくないか?」


 ウムルの挑発に、

 ゼノリカの面々は、ギリリと奥歯をかみしめながら、

 悲しみや怒りを飲み込んで、

 必死になって、どうにかこうにか抗っていく。


 ゼノリカは、ずっと、今の自分にできる全部を賭していた。

 これまでに磨いてきた全てをぶつけている。


 なのに、その結果は散々。

 まったく相手になっていない。

 ウムルはあまりにも強すぎた。


「ぐぅ……」


 ウムルに首を掴まれて、うめき声をあげるカンツ。

 最前線で暴れ続けた彼は、

 当然だが、誰よりも大きなダメージを負っている。


 ジャクリナを失い、『中心の回復』が追い付かなくなり、

 結果、ボロボロになって、

 しかし、それでも、ウムルの前に立ち続けた結果、

 こうして、グチャグチャの状態で惨めに死に続けている。


「センエースを信じない自由。別に好きにすればいいが、しかし、これが、現実だ、カンツ・ソーヨーシ。センエースの大きさを知っている私と、何も知らない貴様の差。この事実を正しく理解しろ。そして、死ね」

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