第2700話 ウムルの中に刻まれた器。


 五聖命王の三人姉妹も登場。

 彼女たちは、コスモゾーンレリックと契約していないが、そのスペックは当然のように破格。

 サポートに長けた彼女たちの登場で、ゼノリカ側のDPSは一気に引き上がった。


 ゼノリカという超巨大組織の層の厚さを痛感するフォーメーション。


 P型の一件で『強大な敵』を学習したゼノリカの面々は、

 あの日以降、『格上相手』に『どれだけ対抗できるか』という視点で、

 『頭がおかしくなるような鍛錬』を積んできた。


 心に神を宿し、

 自身の神種を開き、

 それでも、たゆまずに、努力し続けた輝きの結晶。


 ――そんなゼノリカの猛攻を受けて、

 ウムルは、


「想定の範囲内!! 超天才が、必死に努力した結果――それだけだな!!!」


 涼やかに受け流していく。

 ウムルの目には『すべて』が見えていた。


「貴様らは素晴らしく強くなった。P型とやる前のヌルさはなくなって、すべてがキンキンに研ぎ澄まされている。実質的成長率も、潜在的可能性も、見事の一言。貴様らの才能と根性はたいしたものだ」


 本音でほめたたえてから、


「けど、それだけぇ! 目ん玉ひん剥けるほどの想定外は感じねぇ! センエースは『ケタがバグっている地獄』をかけずりまわって、カオスを飲み込み、ついには『レゾナンスにたどりついた』が、てめぇらは、『お行儀よく成長しました』ってだけぇ! 所詮、どこまでいっても、貴様らは、センエースにおんぶに抱っこのコバンザメ集団! 『本物の絶望』を前にすれば、『かませ』の役割しか出来ない、ただの寄生虫!! そんな、ただ『品がいいだけ』のてめぇらが、『センエースの地獄につきあってきた私』に勝てるかぁあ!」


 本音で叩き潰していく。


 ウムルの中に刻まれた器というプライドが暴走する。

 『プライド』というものは、下手に転がすと『自分の首をしめるだけのお荷物』なのだが、うまく扱うと、『根性』をシッカリとブーストしてくれる。

 ウムルが抱いているのは『カラっぽ』のプライドではなく、

 『センエースに付き合ってきた』という本物の器。


 だから飛べる。

 『ヌケガラ』でありながら、

 『ヌケガラの影』に過ぎない身でありながら、

 しかし、それでも、ここにいる誰よりも高く飛べる。



 ――ゼノリカは、全力であらがった。

 P型戦で壁を超えて、その後も努力し続けた力を、

 あますことなく、必死になって魅せつけた。

 けれど、まったく届かない。

 100点と90点台の差を思い知らされ続けているだけ。


 的確に削られていく。

 ウムルの強さは芯が太い。



「がははははは! 本当に、すさまじい強さだ! 家族が殺されているから、敬愛こそできないが、しかし、貴様の強さには心底からの『敬意』を表する! このワシに『畏怖』すら覚えさせるとは、大したものだ!」



 ウムルの『深い強さ』を痛感したカンツは、

 彼に対して、心の底からの敬意を表した。


 闘いの中で、カンツは、ウムルの言葉を咀嚼(そしゃく)していた。

 『センエースの地獄に付き合ってきた』というウムルの言葉の真意とは何か。

 ウムルの言葉から感じる『重み』の正体を理解しようと頭をひねった。

 しかし、答えなど出てくるはずがない。


 ウムルのフラグメントが、

 ゼノ・セレナーデのセンエースに付き合って、

 100万回以上、全力の殺し合いを続けてきており、

 その道程が、このウムルにも刻まれている、

 ――ということなど、理解できるはずがない。

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