第1456話 混沌融合。
「――待たせたな。それでは、続きをはじめようか。本当の『オレ』の強さを教えてやる」
「ついには表層に出てきたか。お前の異質さも、なかなか面白い」
カドヒトは、冷ややかな眼差(まなざ)しで、
「ちなみに、お前はなんていうんだ? 名前を教えてくれよ」
「最初に言っただろ。オレはオレを理解していない。オレはただの壊れたデータ。しかし、自分の可能性は理解できている。オレは強大な器。オレという器に、バンプティの可能性が注がれた。それが現状」
「自分の言いたいことだけ言うなよ。俺は名前を聞いている」
「結局のところは、バンプティさ。それ以上でも、それ以下でもない」
「……そうかい。しかし、区別は必要だ。だから、俺はお前のことを、バンプティBと呼ぶことにする」
「好きにすればいい。名前など、どうでもいい」
そう言うと、バンプティBは、
「まわれ、カオスバンプティルーレット」
宣言と同時、
バンプティが顕現させていた『普通のバンプティルーレット』は砕けちり、
その破片が、カオスなルーレットとなり、
ぐるぐるとまわりはじめた。
「とまれ」
命令を受けて回転が止まる。
12時の位置の矢印が示したのは、
「――混沌融合――」
宣言すると、
バンプティBの肉体が黒い霧になった。
そして、その霧は、
――少し離れたところで見学していたスールの体を包み込む。
「なっ……なんだっ……」
逃げようとしたが、
しかし、そんな余裕はなく、
一瞬でからめとられる。
どうにか払おうとしているが、
黒い霧は、スールの奥へと侵襲していく。
――その様子をみたカドヒトは、
(……混沌融合ねぇ……どんな融合か知らんけど、今のあいつがスールと融合したところで、タカが知れていると思うが……)
頭の中で『ゴタン(悟〇×サ〇ン)』をイメージしつつ、
黒い霧と戦っているスールに、
「たすけようか?」
そう声をかけると、
スールは、キっと視線を強めて、
「不要です! 自分の身は自分でまもる! 俺は、リーダーに寄りかかるために、反聖典に入ったわけじゃない!」
「そう言うと思ったよ……お前の頑固さは理解できている」
そうつぶやくと、
カドヒトは腕を組んで、
(この段階で処理しておけば、魂魄解除の手間が増えずに済むんだが……まあ、いいさ。お前の頑固さと、俺のワガママは一致している。融通がきかないワガママな変態だからこそ、俺たちは、反聖典なんていう、イカれたコトが出来ているんだ)
心の中でそうつぶやきつつも、ゆるやかに、静観の構えをとった。
そんなカドヒトの視線の先で、
スールは必死に、黒い霧に抗おうとしているが、
しかし、
「うぐっ……ぐぅ……っ!!」
スールの抵抗を、黒い霧はあざ笑う。
『ギギッ。無駄だ、スール。オレは、貴様ごときに抗い切れる絶望ではない』
「ぐぅう! くっそぉおおおおおおお!!」
その叫びを最後に、
スールは、バンプティBに飲み込まれていく。
グルグルと、粒子が不定形の揺らぎをみせる。
魂魄がドロドロに溶けていく。
「「ぉおおおおおっっ!! うぉおおおおおおおおお!!」」
そして、その魂魄は昇華される。
有機的に、一つになっていく。
まるで遮光カーテンみたいに、
張り巡らされた混沌の揺らめきが、
スールの感情を整理して並べて揃えて、
そして、
「……ぶはっ!!」
一致する。
混ざり合った二つの心。
「完成。……バンプティとスールが合体して、バンスールってとこかな」
などと口走る『バンスール』に対して、
カドヒトは、
(まあ、当然、奪われるわな……さすがに、スールじゃ、バンプティBには抗いきれねぇ。そして、やっぱり、ゴタン化しただけ。普通に弱くなっている)
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