第1454話 あなたは……
「強さなんてものは、結局のところ、ジャンケンの上手(うま)さなんだよ。もっと正確に言えば『ジャンケンにうまいもクソもない』という『実は最初から明瞭』だった『当たり前の理解』にいたって、ようやく最果てのステージにたてる」
カドヒトは、タメ息まじりに、どこか遠くをみつめながら、
「ふざけた話だと思わないか? 運ゲーにもちこめたら、ようやく最強。矛盾しているのかどうかすらイマイチよくわからない、奇妙な概念……けど、それが『最強』なんだから仕方がない。ほんとうに……虚しい話だ……」
ボソっとそうつぶやく。
カドヒトの言葉を、まっすぐに受け止めたバンプティは、
だから、
「あなた……は……」
「ん? どうした? なにか聞きたいことでもあるのか?」
「……あなたは……」
そこで、バンプティは、カドヒトの目をじっと見つめて、
「……神帝陛下……ですね……」
貫くような言葉が届く。
いまだ『疑問符の余韻』は消えていないが、
しかし、どこかで『確信めいた色』が刻まれた言葉。
『そんなわけがない』という想いと、
『もはや、そうであってくれなくては困る』という想いが、
ぶつかりあい、せめぎ合い、ぐちゃぐちゃになって、
気づけば、
ポロっと、口をついていた、拙い問いかけ。
そんな問いを受けて、
カドヒトは、
「……」
数秒だけ黙ったが、
「だとしたら?」
そうなげかけると、
バンプティは、息をのんでから、
「……どうして……」
当たり前の疑問を投げかけた。
いろいろな『どうして』が含まれた言葉。
それを受けて、
カドヒトは、
「どうして、か。まあ、理由はいろいろあるだろうな。人は多くの理由を背負って生きている。神の領域に至っても、そこに変わりはない」
そうつぶやいてから、
「まあ、俺は神帝じゃないから、『もし俺が神帝だとしたら』という仮定は、永遠に『意味のない妄想の域』を出ないんだがな。『今』の俺は真実の伝道者カドヒト・イッツガイ。それ以外の何者でもない」
最後に、無意味なフォローを入れるカドヒト。
――そんな様子を、少し離れた場所で見ていたスールは、
(確かに、リーダーは『一歩違う高み』にいるが、だからって『センエース扱い』は違うだろう……何を考えているんだ、バンプティ猊下は……)
心の中で、バンプティの言動に対して疑念を抱いていた。
触れてみなければわからない輝き。
色々な歯車が、ズレて、歪む。
他者や現実を理解することの難しさ。
ただ、スールは、そこで、
(もし、リーダーがセンエースだったと仮定したら……)
そんなことは、今まで、もちろん、考えたこともなかったが、
しかし『その仮定』を前提にモノを考えてみると、
いろいろな思想――妄想が頭の中を駆け巡る。
(もし、仮に、万が一そうだったとしたら……きっと、俺は、センエースという王を認められるだろう……『合理』と『強さ』を併せ持ち、どんな時でも、清廉(せいれん)高潔であり続け、その上で『過剰に美化された聖典に対する忌避感』という『きわめて常識的な視点』を持つ超人。理想的だ。すべてにおいて……もし、リーダーがセンエースだったとしたら、俺にとっても、理想の『道標』……)
ひととおり、妄想を並べ終えると、
スールは、首を横に振って、
(……妄想が過ぎるな……愚かしい……)
自分の考えを、自分で否定する。
否定するにしても、肯定するにしても、
スールの中では、根拠があいまいすぎた。
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