第1426話 信じられない深さ。
「バンプティ。俺はあんたを認めたね。さすがは、九華十傑の第十席序列二位。天下の『霊台』とは器が違う。……俺は、あんたの『歩み』を尊敬する」
「キ〇ガイの賞賛などいらん。貴様は、黙って、私に殴られておればいい」
「残念ながら、お前の武が通っていた時代は終了だ。ここからは俺の時間。特別に、見せてやるよ、俺が辿り着いた世界を。お前が積み重ねてきた狂気すらも遥かに超越した、鼻が曲がるほど泥臭い努力の結晶を」
そう言うと、
カドヒトは、光を線にした。
内側から放たれた瞬(またた)きが、
エッジのきいた菱形(ひしがた)を描きながら、
カドヒトという概念そのものを、瀟洒かつ豪華に輝かせる。
洗練された、命の光。
ゆったりと、深く、雑味なく、
ただ柔らかに、ふりそそぐ。
「ぬぉ……っ」
その厚みに、バンプティの魂魄が震えた。
思わず声をもらすほどに、カドヒトの圧力は大きかった。
バンプティの目の前で、カドヒトは穏やかに流れていく。
踏み込み足に心を込めて、
空気にすら存在を気づかせないほど繊細に、
それでいて、誰もが目を見張るほど大胆に、
カドヒトの『武』は、
あざやかに、バンプティの全てをさらっていく。
(からめ……とられるっ……)
『空間を制圧されている』という認識は、
しかし、どこか不快ではなくて、
湿度を失った渇きが、
ただピリピリと、
全身の至る箇所へと広がっていく。
「誇れよ、バンプティ。お前は、今、俺の『流(りゅう)』についてきている。もちろん、周回遅れだが、しかし、今、お前は俺の背中を見ている」
おごそかなで、どこか神秘的な流。
まるで静かな海。
穏やかで、優しくて、けれど、とても大きい。
(……し、信じられん深さ……)
今のバンプティに、カドヒトの強さを正確にはかることはできない。
カドヒトの武は、バンプティに理解できる領域にない。
現在のバンプティにとって、カドヒトの武は、
『そこの見えない穴』みたいなもの。
(存在値は私の方が上だというのに……)
カドヒトの存在値は170。
存在値だけで言えば、450に達しているバンプティの方がはるかに上。
300の開きはかなり大きい。
だが、戦闘力には、それ以上の『開き』が見えた。
(……私の方が格上のはずなのに……なぜ、こうも、すべてがズレる……っ)
今のバンプティでは、まだ、
『ズレる』としか判断できなかった。
そこから先を求めるには、まだまだ練度が足りない。
今のバンプティは、その事実に気づくこともできないレベル。
(霊台は報告書に『あと一歩のところで逃げられた』などと書いていたが……ふん、ばかものめ……逃げられたのではなく、相手にしてもらえなかっただけじゃ……こいつがその気になれば、霊台程度は簡単に倒せる……この男の深さは質が違う……っ)
カドヒトの強さをハッキリと理解したバンプティは、
『本気』で対応しようと覚悟を決めた。
『格下を相手にするモード』ではなく、
『全力で相手を叩き潰すモード』への移行。
「まわれ、『バンプティルーレット』っっ!」
宣言すると、バンプティの目の前に、
十等分に区切られたホイールが出現し、
グルグルと高速でまわりはじめた。
本気で戦う時にしか使用しない異型グリムアーツ『バンプティルーレット』。
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