第1425話 ゼノリカの天上という、頭おかしい連中の巣窟。
「ついさっきまで褒めておったと思ったら、今度は、一転して侮蔑しだす……さすがの情緒不安定ぶりじゃな。話にならん」
「別に支離滅裂を披露しているわけじゃねぇさ。あんたには武の才能がない。俺と同じだ。何も持たない、からっぽの無能。なのに、あんたは、その領域までたどりついた。驚くほど愚直に積み重ねた結晶。俺にはわかる。あんたは、才能というブーストに一切頼らなかった。ちょっとずつ、ちょっとずつ、バカみたいに、キ〇ガイのように『ほんの小さな一歩しか進めない苦しい毎日』を、弛(たゆ)むことなく、あきらめることなく、必死になって積み重ねてきた」
「残念ながら間違いじゃな。私には高位のスペシャルがある。『成長早い』という、非常にレベルが上がりやすくなるブルーツースペシャル」
『才能のなさを努力でカバーした』という『侮蔑』をうけるたびに、
バンプティは『先の反論』を繰り返してきた。
事実、バンプティには、レベルが上がりやすくなるブルーツースペシャルがある。
しかし、天上にたどり着く者は大概、『成長早い』系のスペシャルを持っている。
成長早いという『非常に利便性の高いスペシャル』にプラスして、
ほかにも『チート級の何かしら』を持っている者が、
『必死になって努力すること』でたどり着けるのがゼノリカの天上。
『ジェットエンジンが搭載された休まないウサギ』たちが、
ゴールのないイバラ道で、永遠の魔改造鉄人レースをしている。
――それがゼノリカの天上。
完全に頭がおかしい連中の巣窟。
九華十傑の第一席ジャミ・ラストローズ・B・アトラーのように、
多大なチートを『持ちすぎている者』は、また別枠としても、
バロールやサトロワスのような、
『九華の中だと比較的地味なスペックを持つ者』と比べても、
バンプティの資質は、圧倒的に劣っている。
※ バロールとサトロワスは、どちらも、
ステータスが高いスタンダードタイプであり、
『特に際立ってレアな資質』は有していない。
もちろん『一般人と比べれば非常に強力な資質』を有しているが、
九華の中で相対的に見た場合、
どちらもレアタイプとはいいがたい。
バロールの黒猿なども、所詮は、
ちょっとアリア・ギアスを積んだだけの、
よくみる変身技でしかない。
バンプティは、間違いなくハズレ枠。
本来であれば、十席の序列二位という地位になど、たどり着けるわけがない凡夫。
だが、彼はたどり着いた。
たゆまぬ努力を積み重ねて、
高みに上り詰めた。
そんな狂気の結晶バンプティを、
カドヒトは、まっすぐに見つめて、
「レベルの話なんかしてねぇよ。数字なんざ、ただの補正だ。武という領域において、もっとも大事なことは数字じゃない。もちろん、数字は土台だから、どうでもいいというわけではないが、結局のところ、一番大事になってくるのは『数字の向こう側にある魂の歩み』。そこが薄ければ、実際のところ、なんの価値もない。少なくとも、俺は、数字だけ膨らんでいるバカに敬意を表することはしねぇ」
そう言いながら、
カドヒトは、ゆっくりと武を構えて、
「バンプティ。俺はあんたを認めたね。さすがは、九華十傑の第十席序列二位。天下の『霊台』とは器が違う。あのオバハンも、もちろん強かったが、あんたは遥か先を行っている。……俺は、あんたの『歩み』を尊敬する」
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