第1418話 天下案件のカドヒト。
「……ふむ……となりますと、カドヒトならば問題なく裁ける、ということですな」
「当然じゃ。カドヒトには何をしてもよい。アレはただのクズじゃ」
そう前を置いてから、
パメラノは渋い顔をして、
「しかし、あのクズは、逃げ足だけは立派らしく、楽連の上位が出ても捕まえるにはいたっておらん。何度か留置所に入れたことはあるそうじゃが、毎度毎度、ほとんど自分の意志で捕まったようなものでしかなく、いつも、その日のうちに脱獄してしまう」
まるで、免許の更新のように、
一定の間隔で捕縛されては、
『写真の更新』と『存在値の測定』だけして、
気づけば煙のように消えている。
※ 『写真撮影(囚人番号のプレートをもって、身長のラインが背景にあるやつ)』と『存在値の測定(基本的には存在値の高さで監獄の種類が決まる)』は、逮捕された者が最初にすること。
「一度、『霊台(長強の嫁)』に本気で狩らせてみたが、結局、カドヒトを鎮圧するには至らなかった。あと一歩のところで逃げ切られてしまったらしい。いつも思うが、まったくもって、惜しい人材じゃ。霊台から逃げ切れるのほどの実力者なら、愚連に入ることも容易であろうに、才能を無駄遣いしおって……」
頭を抱えるパメラノに、
バンプティが、
「ならば、私が出ましょう」
パキっと指の関節を鳴らしながら、
「これまでは『所詮、アホがわめいているだけ』と捨て置いておりましたが……さすがに、そろそろ我慢の限界。肉体言語で説教してやりたく存じます」
バンプティの意気込みに対し、
パメラノは、スッキリしない顔で、
「霊台が仕留められなかったと言っても、逃げ足がハンパではないというだけで、所詮は存在値170程度の『天下案件』じゃからのう……」
ゼノリカの視点だと、存在値200を切っている犯罪者は、
『天下がどうにかすべき対象』と認識されており、
それは、暗黙の了解などではなく、
キチンと、成文化されている『大事なルール』の一つ。
「カドヒトは『存在値200以下』で、かつ『際立って危険なスペシャル』を持っているというわけでもない『きわめて平凡』なベーシックタイプの中級犯罪者。気配の殺し方だけは一級のようじゃが、しかし、それ以上でもそれ以下でもない小物。……どう考えても、天上が出るほどの相手ではないのじゃが……」
パメラノは、ブツブツ言いながら、天を仰いで息を吐く。
――『仕事』には役割というものがある。
天上には天上の、天下には天下の、『こなすべき仕事』がある。
なんでかんでも『上がでしゃばればいい』というものではない。
上司が優秀だからといって、雑務から何から全て上司がこなしていては、
『組織としての示し』がつかないし、なにより『組織のシステム』が育たない。
ゼノリカは規律と未来を重んじる。
『魚を釣ってやる』のではなく、
『どれだけ面倒でも、魚の釣り方をエグいスパルタで教えていく』
というスタイル。
『脳死した指示待ち人間』の山を築いても未来はない。
脳死バカで土台をつくれば『支配する』のは簡単になるだろうが、
純粋なる『輝く明日』を求めることは難しくなる。
ゼノリカはいつだって、茨の道を選ぶ。
その先にしか光はないと知っているから。
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