第1417話 これが、若さゆえの過ち。
最後の最後、扉を出る時に、
スールは、
「……俺は間違っていない」
ボソっと、そう言ってから部屋の外に出ていった。
――スールが出ていってから五秒ほど経過した時、
パメラノが、静かに口を開いた。
「若さというのは、いつ触れても、ひどく不安定で……だから、毎度毎度、悪い意味でドキドキしてしまう」
「……しつこいようですが……帰してよろしかったのですか、猊下。さすがに、今回の件は、黙って見過ごすべきではないかと思われるのですが。あそこまでの暴挙を許していては、示しがつきません。法の意味がない。秩序が歪んでしまう」
背後のバンプティが、強い言葉で、そう問いかけてきた。
ゼノリカの上位に位置する者は、全員、我が強い。
ゆえに、相手が上位者であろうと『間違っている』と思ったら、
ひるまずに、強い言葉で正そうとしてくる。
不条理や不合理を許さない潔癖集団。
心にセンエースを抱いている者たち。
ゼノリカには、センエースを信じていない者も存在するが、
そんな者たちだって『センエースの意思』は心に刻まれている。
パメラノは数秒考えてから、
「あの若者は、わしの言葉に真っ向から異を唱えただけ……あれが『聖誕祭を妨害する目的のいやがらせ』だったのなら話は別じゃが……しかし、決してそうではない。若者の『ほとばしる本気の想い』に正面から向き合うのも年長者の役目。……どの視点から見ても、あの若者の行為は、法には触れておらんよ」
神法には『センエースの名をけがしてはならない』という一文があるが、
しかし、その『定め』は『センエース以外』の天上が設定したもの。
神法は、ゼノリカが『そのまっすぐな信念』に従い『遵守する』と誓った覚悟。
その定めは絶対だが、『神法』の上には『真・神法』がある。
それは、センエース自身が直々に定めた絶対ルールであり、
ゼノリカにおいて『その法に反すること』は最上級のタブー。
そんな『センエースが設定したルール』である『真・神法』には、
ハッキリと『センエースを信じない自由を許す』というものがある。
だから、ゼノリカは絶対に『センエースに対する信仰』を強制しないし、
『反聖典組織リフレクションをつぶすために全力で動き出す』ということもしない。
「悪意や害意をもって主の名をけがすことは許されぬが……信念を持って『主を信じない』という『覚悟』を示す者を裁くことはできん」
まっとうな法とは平等な鎖。
守らない者にとっても、守る者にとっても、
『命を縛り付ける鎖』に他ならない。
「反聖典組織リフレクションは、尊き主のことを『怠惰な無能』だと触れ回っているイカれた組織ですよ。『主を信じない自由』とはまた違うと思うのですが? リフレクションの思想は、どう考えても悪意や害意に属するものかと」
「イカれた戯言で主を中傷しているのは、カドヒトとかいうラリったバカ野郎だけ。構成員は、ただ『理想の英雄という概念を信じることは難しい』という自由意思を集団で示しているだけでしかない」
「……ふむ……となりますと、カドヒトならばなんの問題もなく裁ける、ということですな。ボコボコにして、ひっとらえて、徹底教育を施し、『私は神帝陛下が大好きです』としか言えない体にしてもよい……と」
「当然じゃ。カドヒトには何をしてもよい。アレはただのクズじゃ」
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