第1105話 『78番』VS『センB』


「しょぼい分身だ……この程度で俺をどうにかできるとでも?」


「その分身でお前を倒すのは難しい。なんせ、あまりにも弱すぎるから。戦闘力も存在値も、お前よりもはるかに劣っている。普通に考えたら絶対に無理。『そいつ』は、そういうレベルの分身だ」


「わかっているじゃねぇか。お前は決して愚かじゃない。なのに、どうして歯向かう? お前の行動……あまりにも一貫していなさすぎて、さっぱり意味がわからない」


「これまでずっと、俺は『そういう生き方』をしてきた。『そういう生き方しか出来ない』ってわけでもないのに、なぜか俺は『そういう生き方』を貫いてきた。――だからというワケでも、実際のところはないのだけれど、しかし、それでも、俺はやっぱり、これからも『そういう生き方』を貫いていく。それだけの話さ」


「……なんだ、その迂遠な言い回し。何を言っているのか、さっぱりわからん」


「だろうな。お前に言っているわけではないから当然だ。俺は俺自身の覚悟を、俺自身につきつけているだけ。いつだってそう。大事なのは俺がどうすべきか。それだけさ」


「……本当にわけがわからん。……まあいいや。めんどうくさい。お前と話していても時間の無駄だということはよくわかった。さっさと叩き潰して終わらせてやる」


 言いながら、78番は、『センB』に向かって拳をつきだした。

 グンと腰の入った、重たい右ストレート。


「うごっ!!」


 78番の拳をもろに顔面に受けたセンBは、

 ダイナミックに吹っ飛び、鼻からドクドクと血を流す。


 センBは、ズキズキしている鼻を両手でおさえて、

 涙を流しながら、


(痛ぇぇ…………や、やべぇ……拳が見えねぇ……つぅか、いくらなんでも『この体』は弱すぎるぞ……『天国の連中を使って必死の思いで上げてきた戦闘力』も、アホほど制限かかっているしよぉ……くそたっれがぁ……)


 センBは、ふらつきながらも、

 どうにか立ち上がり、


「くっそ、くっそ、くっそ……『自分に厳しいのは結構』だけどよぉ……でも、これって、自分に厳しいって言えるのか……しんどいのは俺だけじゃねぇか」


 そんなセンBの発言に対し、

 センは、毅然とした態度で、


「お前が苦しいと、俺も苦しい気がする! だから、俺は自分に厳しい! Q.E.D.! というわけで、がんばれ! みせたれ、お前の根性論! それいけ、鋼の根性論! ファイトで世界を変えていけ! お前ならできる! やらねば成せぬ、何事も! リピィアフタミー。ほらほら、目が死んでいるぞ! ガッツはどうした! お前のガッツはそんなもんじゃないだろ! しらんけど!」


「……どこのアホなブラック社長だよ……こ、殺してぇ……」


 怒りでヒクヒクしているセンBと、後方で腕組みして静観しているセン。

 その二人に、それぞれ、侮蔑の視線を送ってから、

 78番は、


「もう無駄だってことはわかっただろう。さあ、社会勉強の時間はここまでだ。これ以上、俺に抵抗するなら殺す。そこにいる女どもも殺す。俺は決して理不尽な悪者じゃないが、邪魔してくるやつは殺す。俺はそうやって生きてきた」


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