第1102話 偉大なる使徒メービーの弟子センエース、爆誕。
「これで、ぬしは、もう試験を受ける必要などない。というわけで、明日、朝五時に、フーマー東方の霊山に集合じゃ」
「……は?」
「話は通しておくから、ぬしは、ただ、正午発フーマー行きの船に乗るだけでよい。ああ、当たり前の話じゃが、一応言っておこう。そこの女二人を連れてくるのは禁止じゃからの」
「……あのぉ」
「ぬしは本当に豪運じゃ。なんせ『この私に認められるほどの才』をさずかって生まれてきたのじゃから」
「……」
「あらためて、おめでとう。今日からぬしは、正式に『私の弟子』じゃ。その称号は『冒険者』などというチンケな称号とは比べ物にならん」
「……」
『なんと言ったものか』と思案顔になるセン。
その向こうで、
メービーは、
どこか遠くを見ながら、
「明日から厳しい訓練が始まる……間違いなく『ぬしの想像を絶する厳しさ』じゃ……しかし、ぬしならば耐えられるじゃろう。そして、いつの日か……」
そこで目をとじると、
結局、最後まで言い切ることなく、
センに背中を向けて、メービーは、どこかに去っていった。
『無言で何かを語りかけてくる背中』
その熱い背中を見送りつつ、
センは、
(……んー、冒険の書をくれた『優しいお爺さん』をシカトするのもどうかと思うし……まあ、アバターラでも送っておくか……)
と、心の中でつぶやいてから、
「……ふふ」
手元にある冒険の書を見つめて、
(まだかなり先になると思っていたが……ひひ……マジで助かった……)
心の中で安堵のため息をついていると、
隣にいるシューリが、
「いやぁ、本当に、ガチで、マジで、真剣に助かりまちたねぇ……正直、虫ケラとのお遊びには心底辟易していたところでちゅから」
続けてアダムが、
「主上様の御力を考えれば当然の事かと存じます。というより、献上してくるのが遅すぎると言ったところでしょうか。――なにやらワケのわからん勘違いをしていたようで、そこが少し気になりましたが、まあ、年も年というコトで、本格的にボケているだけでしょう。相手にする必要はないかと存じます」
二人の言葉を受けとめながら、
センは、
「カギは手に入れた……あとは、開けるだけ……くく……さぁて、あの扉の向こうには、いったい何が――」
などと、浮かれていると、
そこで、『不穏』が近づいてきた。
いつだってそう。
絶頂期にこそ『足元をすくいにくる悪魔』が登場する。
「おい、そこのガキ」
受験番号78番の屈強な男が、
ニタニタ顔で近づいてきて、
「話は聞かせてもらった。試験官にワイロを渡して冒険の書を買うとは、なんとふてぇ野郎だ」
「ぜんぜん話聞いてねぇじゃねぇか。俺は、あの『優しいお爺さん』に認められて、冒険の書を手に入れたんだ」
「ふん、なんと喚こうが無駄だ。お前は『不正の現場』を俺に抑えられてしまった。俺は悪を許さない正義の使者。よって、お前の罪はここで、さばかれる。俺は、問答無用で『お前がおかした不正』をただす」
「……ようするに?」
問いかけると、
78番は、ふんぞり返って、堂々と、
「お前が不正に手に入れた冒険の書を、正義の名のもとに強奪し、闇ルートで売りさばく」
「……見事な正義っぷりだな。ぐぅの音も出ないとはまさにこのこと……」
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