第1085話 一分、待ってくれ。


 無敵のコールによる、強制覚醒。

 さらに、P型センキー・ゼロオーダーは、その爆発的なオーラを、

 驚異的な集中力で、


「――はっ、はっ、はっ、はっ、はっ」


 グングンと練り上げていく。



 その様子を目の当たりにしたゴートは、



(膨れ上がった……倍……3倍……いや、それ以上か……)



 P型センキー・ゼロオーダーになった時点で、

 すでに、圧倒的なバケモノだったが、

 ヒーロー見参を叫んでからのP型センキー・ゼロオーダーは、

 よりエグく、よりエッジのきいたバケモノとなった。


(ふざけた話だぜ。ムチャクチャな速度で強くなりやがって……いや、成長スピードに関しては、俺が言えた義理じゃないが)


 心の中でそうつぶやいてから、

 ゴートは、


「……はぁああ……」


 精神を統一させて、

 気合を込めて、

 全身全霊でオーラと魔力を練り上げる。


 EXレベル99兆という『途方もない極限』に至った力を全力で開放させる。


「……P型センキー・ゼロオーダー。今のお前は、出力だけで言えば、俺と戦える領域にある……驚いたよ。心底から驚いた。けど、まだ俺の方が上だ……ハッキリと、俺の方が強い」


 切り捨てるような宣言をするゴート。

 心を折るミッションは継続中。


 ――そんなゴートの一手に対し、

 P型センキー・ゼロオーダーは、

 スゥと息を吸ってから、


「……一分待ってくれ」


「ああ?」


「……一分後、俺は、お前を超えるから、だから、少し待ってくれ」


「……そんなことを言われて『はいそうですか』って待つワケないだろ」


 ほかの誰かのセリフなら、

 『たった一分で、これほどの圧倒的な差が縮むワケないだろ』と吐き捨てるところだが、

 P型センキー・ゼロオーダーの言葉だけは戯言として処理するわけにはいかない。


 なんせP型センキー・ゼロオーダーは、

 たった数分で、存在値2ケタを14ケタにまで伸ばした稀代のチート野郎。


 だから、ゴートは、


(ありえる。こいつなら、マジで俺を超えてしまうかもしれない。『数値』しか誇れるモノを持たない俺は、数値を超えられた時点で勝ち目がなくなる……そうなったら『リーンを助けること』ができない……ならば、もはや、『殺してしまったら、どうこう』を考える余裕はない。全力で、いまのうちに、俺よりも強くなる前にブチ殺す!!)


 勢いよく飛び出して、

 手加減なしの猛攻でP型センキー・ゼロオーダーを圧殺しようとする。


 ――しかし、P型センキー・ゼロオーダーは、

 すでに、存在値『数十兆』クラスの膨大なバケモノ。


 つまりは、HPも耐久力もハンパではないということ。


(ぐっ……硬い! 俺の方が、まだ、間違いなく『強い』が……しかし、今の俺には、こいつを一分以内に削りきれるほどの火力はない……っ!)


 『狂った量の魔力』を積んだ異次元砲をぶっ放したりもしたが、

 結局、P型センキー・ゼロオーダーのHPを削りきることはできず、


「全戦闘データ更新完了」


 ぴったり一分が経過した時、

 P型センキー・ゼロオーダーは、ニっと笑いながらそうつぶやいて、

 ――さらに、






「P型ルナ・センエースっっ!! 生成完了っっ!!」






 強大な力を持つ携帯ドラゴンまで召喚してしまった。


 なんともあっけない、超々々々覚醒。

 『特に重たいドラマ』の一つもなく、

 サクっと『完成してしまったP型センキー・ゼロオーダー』を前にして、


「……ぅ」


 ゴートは、小さなうめき声をあげる事しかできなかった。




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