第1081話 俺は、P型センエース3号。
「俺に敗北を認めさせない限り……永遠に、リーン・サクリファイス・ゾーンが解放されることはない」
そんなことを言い出した。
ゴートは、少しホっとしながら、
「急に説明してくれんのか。『唐突すぎてワケがわからない』って現状に変化はないが……けど、まあ、助かった。さあ、もっと、いろいろと教えてくれ。『敗北を認めさせる』ってのは、殺せってことか? それとも、287期ハンター試験の最終試験みたいに、殺したらアウトか?」
「俺は……ゴート・ラムド・セノワールの剣……」
「ぉ、ぉお……」
まったく会話になっておらず、
だから、ただひたすらに困惑するしかないゴート。
しかし、リーンの命がかかっているため、
投げ出すこともできず、
だから、ゴートは根気よく、
「んー、え~っと……うん、OK、OK。なるほど、わからんけど、まあ、うん……お前は俺の剣。オールオッケーだ。さあ、次の情報に行こう。できれば、もう少し、かみくだいて説明してほしいな。さあ、深呼吸してぇ……ゆっくり、丁寧に……『この面倒ごと』の『処理方法』について解説してくれ」
「俺はP型センエース3号……それ以上でも、それ以下でもない……」
「おい、急に投げやりになるなよ。もう少し頑張って――」
と、そこまで言った時点で、
P型センエース3号の視線がキっと強まって、
「俺は! ゴート・ラムド・セノワールを倒す者!!」
そう叫びながら、
両手にオーラを込めながら、殴りかかってきた。
「……おいおい……お前は、俺の剣じゃなかったのか? 俺の剣なのか、俺の敵なのか、別にどっちでもいいんだが、しかし、せめて、どっちかにはキャラを決めてくれや」
鬱陶しそうな顔をして、
ゴートは、P型センエース3号の拳をよけた。
プロパティアイでステータスを見ることも、サイコイヴ‐システムで解析することもできなかったが、しかし、一度でも殴り合えば、だいたいの力量くらいはわかる。
(存在値的に言うと……『10』くらいか……なんで、こんなカスを解析できないのかわからないが……)
と心の中でつぶやきながら、
ゴートは、P型センエース3号の攻撃を、ササっといなしていく。
P型センエース3号の存在値は10前後。
つまりは、本気で相手をするまでもない虫ケラ。
だが、ゆえに、
(こいつが、本当に、リーンを開放するためのカギなら……おそらく、『殺害』は悪手……なぜならば、『こいつを殺すこと』はあまりにも簡単すぎるから。ここまで手の込んだ『いやがらせ』を仕掛けてくるヤツが、そんな簡単な条件を課すわけがねぇ……つまりは確定でワナ)
そう深読みしてしまう。
そして、だからこそ、ゴートには手がなくなってしまう。
(敗北を認めさせる……キチンと実行しようと思うと、なかなか手段が難しいミッション……『ゴ〇さん』みたいに、ボコボコにしようがどうしようが頑として『認めない』と言い張られてしまうと手がなくなる……こんな完全にイっちゃっているようなヤツに拷問したところで、おそらく効果はないだろうし……やべぇな……このミッション、意外と前提で詰んでるぞ……)
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