第1079話 決闘を所望する。
いつもなら、すぐに返事がくるのだが、
今日は、いつまでたっても返事がなかった。
(この時間はいつも、執務室で、書類仕事に追われているはず……もしかして、寝てしまったのか?)
そう思いながら、少しだけオーラ探知の感度を上げて、
ドアの外から、中の様子を確認してみる。
すると、
(……? いない……?)
不審に思ったゴートは、
扉を開けて中に入り、周囲を見回した。
(……出かけた? いや、どこに行くにしても、一応、俺には声をかけるはず……)
などと思いながら、執務室の中をきょろきょろと探ってみると、
彼女の机の上に、雑な字で書かれた置き手紙があった。
その内容は、
「っっ?!」
いたって単純で、
『リーンは預かった。返してほしければ、
サイコゾーン・サンクチュアリに来い。決闘を所望する』
というものだった。
置き手紙の中身を確認したゴートは、
たぎる怒りに身を任せ、
タンッと、地面を蹴った。
一瞬で姿が掻き消え、
次の瞬間には、
サイコゾーン・サンクチュアリの扉前にいた。
蹴やぶるような勢いで中に入ると、
開口一番、
「どこのアホか知らんが、死にたいなら、秒で殺してやるから、さっさとかかってこい、ぼけ、ごらぁあ!」
赤鬼のようなバチギレの顔でそう叫ぶゴート。
しかし、ここに敵の姿はなく、
「……リーン……」
彼の眼前には、『浮遊しているクリスタルに閉じ込められているリーンの姿』があるばかり。
ゴートは、すぐさま、そのクリスタルに駆け寄ると、
サイコイヴ‐システムを用いて、すぐさま解析分解しようとしたが、
(……か、解析不能っっ?! 今の俺に解析できないだとっ?! ふ、ふざけやがって……今の俺のレベルは100兆だぞ……『解析できない』なんてコトがあっていいワケ……くっ……な、ならば……)
ゴートは、オーラソードを召喚し、リーンを傷つけずに、クリスタルをスライスしようとしたが、
――ギィンッッ!
と、『絶対に切れない』と一発で理解できる異次元の『硬さ』を体験するだけだった。
(おいおい、なんだ、このクリスタル……どんな素材で出来てんだよ……かすり傷一つ、つけられる気がしねぇ……いやいや、いやいやいや、あっていいわけねぇだろ、そんな素材……)
焦りから冷や汗がにじんできた。
と、ほぼ同じタイミングで、
「っ?!」
ギチギチィっと、
奇怪な音が響いた。
(……手紙の差し出し主か……?)
ゴートは、奇怪な音がした方に視線を向け、即座に戦闘態勢をとった。
ゴートの視線の先では、
次元の隙間に歪な亀裂が入っており、
バチバチと、黒い電流を放出していた。
数秒後、バチバチとうなるだけだった亀裂の奥から、
[…………kssi75622vusduosi33divhoviknsklniohishklvnslkdsba55665sksksl9988kfh]
一人の青年が這い出てきた。
十七歳くらいに見える黒髪の青年。
その青年は、
[xb2222677agigdf2311auncbajdfg99878aiuvakncla3321dajcgbj6678cladja8888gdufgahlcnl]
高速で口を動かして、何かを発している。
聞き取れる速度でも言葉でもない。
ただ、その異常に速い喋る速度は、次第に遅くなっていって、
[utuh55567nvvdnas112212clasbcla999jbajalnchbabjdhaohbjbxakljhljhlajdbhlajbdkjabkajbkajbhghagdkhabkjbhgiygakjbkhvkjv;huikbskjcbm,cnslkhsfrujgbv,jsnxfck,nvlsjbfkhdbxjkcnv,xbcvbxkjcnvslnvjxnklcnklxnjkbxkjcnjxknlkvnxljnjxnknxcnslkznzlkvljxhlkjzk7ewohiefng09u-9w3ejw9dj9jwe90wd902jfiocj4記憶データ、登録『不可』……」
ついには、言葉を発する。
「……人格インストール『不可』……」
その青年は、どこでもない虚空を見つめたまま、
「……俺はダレだ……」
ボソっとそうつぶやいた。
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