第1045話 裏閃流の極み。


(ただの千本桜なら問題はない……所詮は、数が増えただけ)


 そんなことを考えていると、

 センたちは、バっと右手を天に向けて、


「「「「「「「「――裏閃流覇奥義――」」」」」」」」


(覇奥義? なんだ、それは……データにない……まさか、※※の野郎……俺の『攻略データ』にも改竄(かいざん)を……ちっ……まあ、しかし、どんな技がこようと――)




 ――閃統空羅(せんとうくうら)――




 カっと、深い輝きに包まれて、

 荘厳な力場が生成された。

 無数のジオメトリが圧縮されて、あまたの線が、立体の点になった。

 輝きは、いつしか収束し、

 気づいた時、

 そこには、

 淡い光に包まれた『孤高の王』が立っていた。


 その姿を見て、P型センキーは、


(なるほど……ようは、ゼンの裂空閃光の元ネタってところか……)


 ゼンの裂空閃光モードは、センの奥義をもとにして組みこまれたモード。

 方向性はほぼ同じで、1000人の異次元同一体をセンエースの中で統一する積み技。

 存在値はさほど上がらないが、使用可能なオーラの総量が増大し、

 かつ、歪みが矯正されることにより、戦闘力がグンと底上げされる。


(だいぶスペックアップしているが……くく、いける……あの程度なら……余裕で詰め切れる)


 心の中でそうつぶやき、

 ニタっと微笑んでから、


「うんうん、なるほど……オーラの総量が随分と増えたな。やったね、センちゃん、通常時より、必殺技が増し増しで撃てるよっ」


 小バカにした態度で、


「戦闘力も、だいぶ底上げされているコトだろうし。おぉ、こわい、こわい。……で? まさかとは思うが、それで終わりじゃないよな? もしそれで終わりだってんなら、俺の方が、まだ強いと思うんだが?」


 などと言いながら、実際の本音では、

 『さすがに、これで終わりだろう』と思っての発言。

 ――しかし、


「なにいってんだ、ボケ。これで終わるわけねぇだろ」


「……ぇ?」


「千本桜や空羅なら、ゲージがたまってなくても使えるんだよ」


「……」


「ショータイムは、ここからはじまるんだ」


「……ほお……」


 冷静ぶっているが、内心では少し焦っていた。

 未知に対する恐怖。

 敵対した時の『センエースの可能性』ほど恐ろしいものはない。




「――裏閃流究極真奥義――」




(……究極真奥義……御大層な名前じゃないか……それで? いったい、どこまであがる? ……まさか、今の俺を超えるなんてことは……)


 などと考えていると、

 センが、




「――クレヨン閃ちゃんシリーズ――」




「……は? くれよん……?」


 P型センキーの動揺など一切シカトして、

 センは詠唱を続ける。




「――超景戯画(ちょうけいぎが)トリビュート・センダーランドの大冒険――」




 そう言った瞬間、

 センの右手に、

 一枚のトランプが出現した。


 センが、そのトランプを、目の高さまでかかげ、



「スゴイナ・スゲーデス」



 呪文をとなえると、

 トランプがまばゆい光を放ち、

 三つの閃光が飛び出してきた。


 虹色の弧を描きつつ、優雅に宙を舞ってから、

 三つの閃光は、それぞれ、固有のカタチにとどまると、

 決めポーズをとりながら、


「セン仮面、見参」

「エースロボ、見参」

「モンジンざえもん、見参」


 仮面をかぶったセンエースと、

 ロボスーツに身を包んだセンエースと、

 ブタの着ぐるみを着たセンエースが、

 それぞれ、名乗りをあげた。



「……どういうお笑い?」



 半笑いでそう言ってくるP型センキーに、


「笑っていられるのも、いまのうちだ!」

「言っておくが、俺たちは、空羅を積んだセンと同等の力をもっているぞ!」


 そう叫びながら、

 セン仮面とエースロボは殴り掛かった。


 二人の攻撃を回避しながら、

 P型センキーは、


(なるほど……確かに、オーラ量と存在値はバカ高い……まあ、しかし、戦闘力はゴミだな。とてもじゃないが『現状のセンエース』と同等とは言えない。ま、そりゃそうだ。分身に『極限の戦闘力』なんざ積めるわけがないんだから。しょせんは、アバターラの上位互換ってところ。これだったら、千本桜をそのまま使った方がよかったな)


 心の中でつぶやくと、

 半笑いのまま、


「ははっ……『究極真奥義』なんて大層な名前だから、いったい、どれだけ強力な技なんだろうと期待したんだが……結局のところは、ちょっと小マシな分身か。安い、安い。……あえて言おう。しょうもないんだよ!」

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