第1044話 裏閃流覇奥義。
「本当に、お前は、存在からしてチートだな、センエース。お前だけだ。お前だけが、この偉業をなせる。命の最前線――火事場における狂気的な爆発力。お前は素晴らしい。だが、覆すまでは至らなかった。これも事実」
センエースは、スペック差を考えれば、ありえないほど、強靭に抗った。
しかし、削り切るまでにはいたらなかった。
決して、センエースが弱いわけではない。
ただ、P型センキーという『中学二年生の冗談のような反則』が、あまりにも狂いすぎているだけ。
「終わりだよ、センエース。お前はよく抗った。心の底から、お前には敬意を表する。だが、さすがに、もう終わりだ。お前の終わりで、世界も終わる。それでいいじゃないか」
「終わらねぇよ。何一つ終わりはしない。なぜだか教えてやろうか?」
「ああ、ぜひ聞きたいね」
「ここに、俺がいるからだ」
「……」
「湧き上がってくる……『いつも』と同じだ……『厄介な絶望』を前にして、俺の魂が沸騰している。お前という、とんでもない敵を前にして、俺の心が騒いでいる。……しんどくて、つらくて、くるしくて……しかし……『それでも』と、俺の全部が喚いている」
「……お前の最も特筆すべき『恐ろしい所』は『ソレ』だ。瀬戸際の土壇場で『本物の勇気』を叫べるだけでも大したものだというのに……お前は……決して、『口だけ』にとどまらない」
P型センキーは、その肌で感じた。
センエースを包んでいるオーラの質が、グっと深くなった。
大きくなったワケでも、強くなったわけでもない。
「お前は『成して』きた。誰よりも強く絶望に抗うだけではなく、必ず乗り越えてきた。そこがおそろしい」
ただ、『より踏み込んだ覚悟』を背負ったことによって、
オーラの性質に、先ほどよりも、深みが増した――それだけ。
オーラは、感情によって、性質がわずかに変化する。
感情によるオーラの変化というのは、ほんとうに些細で、
変化したからといって、何か、メリットがあると言うワケでもない。
なのだが、
センエースのオーラの変化は、少し違った。
P型センキーは、
コメカミから、スっと汗を流しながら、
「これは……根源的な恐怖……お前の圧に、俺の潜在意識が震えている……」
P型センキーは、そこで、
「ぎっ……」
っと、奥歯をかみしめ、
自分の『奥』にある弱い心を叱咤して、
「空気感だけを見れば、まるで、俺が追い詰められているようじゃないか……俺の方が強いのに……おかしな話だ……」
「お前の情動は正しい」
「あん?」
P型センキーの疑問をシカトして、
センは、スっと、武を構える。
グワっと足をあげて、虚空に、回転蹴りを放った。
攻撃ではない。
手を合わすのと同じ。
いつもと同じ、本気で闘う前のルーティン。
シュンシュンと、二度ほど空に蹴りを放ち、
右腕で下弦を、左腕で上弦を描く。
ゆるりと体をほぐしてから、
ダ、ダンッッ! と両足で地面を踏みしめて、グっと腰を入れる。
「ようやく魂魄が温まってきた。――無粋な言い方をすれば、超必殺技ゲージがたまった。というわけで、ここからは少し派手にいくぜ」
「……」
「教えてやるよ……恐怖。ここからの俺を魂魄に刻め。ショータイムだ。すべての絶望を絶望させてきた俺の……『頭がおかしい本気の全力』を見せてやる」
「……」
そこで、センは、両手で印を結び、
「――裏閃流秘奥義、閃舞千本桜――」
宣言した直後、
「っ?!」
P型センキーは、1000人のセンに囲まれていた。
センの初手に、P型センキーは、一瞬だけ体を震わせたが、
しかし、すぐに心を落ち着かせる。
(……はん、なにかと思えば、ただの千本桜か。……なら、問題は何もない……所詮は、数が増えただけ。究極超神化7に覚醒したことで、異次元同一体の運用時間は爆発的に伸びているだろうが、しかし、そうはいっても、さすがに10分以上はもたない。デコイをバラまきつつ、徹底して回避に専念し『異次元同一体をとどめておける時間』を枯らせば終わり。楽勝のミッション――)
そんなことを考えていると、
1000人のセンたちは、バっと右手を天に向けて、
「「「「「「「「――裏閃流覇奥義――」」」」」」」」
(覇奥義? なんだ、それは……データにない……まさか、※※の野郎……俺の『攻略データ』にも改竄(かいざん)を……ちっ……まあ、しかし、どんな技がこようと――)
――閃統空羅(せんとうくうら)――
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