第1033話 対面。


「俺の本体が製作した『認知の領域外』を見つけるには、お前でも、最低一時間はかかる」


 P型センエース2号は、優雅にほくそ笑み、


「ギリギリまで隠れているつもりだったんだが……想定を遥かに超える速度でインストールが終わって、もう隠れている必要はなくなったんだ……というわけで、招待させてもらうよ……さあ、こっちだ」


 パチンと指を鳴らすと、

 センエースの目の前に、時空の亀裂が産まれた。

 いぶかしげな顔で、その亀裂を睨むセンエース。

 あまりにもワナ感が過ぎた。

 しかし、今のセンエースでは、そのワナに飛び込む以外に道はなかった。


 だから、数秒、悩んだものの、


『ナメやがって』


 と、一言つぶやくだけで、

 亀裂の中へと飛び込んでいった。


 その決断力と胆力は、さすがといったところ。


 ともに周囲を散策していたアダムとシューリも、その亀裂に飛び込もうとしたが、

 その直前で、P型センエース2号は、指を鳴らし、亀裂を閉じた。

 邪魔者はいらない。

 P型センエース2号が望むのは純粋なタイマン。


 亀裂が閉じてから、キッチリと一秒後、

 認知の領域外に、

 『神の王』が降臨した。


 P型センエース2号を視認した舞い散る閃光は、

 その足下にいるゼンを見つけると、






「……とりあえず、その足をどけようか」






 芯に響く低い声でそう言った。


「ああ、そうだな。そうしよう」


 P型センエース2号は、奇妙なくらい素直に、センエースの要求に応じると、

 ゼンの頭から足をどけて、

 そのままの流れで、


「よっと」


 ゼンの右腕を右手で掴んで、ゆっくりと持ち上げる。

 その様を見たセンは、

 溜息を一つはさみ、


「……とりあえず、その手を離そうか」


 そう言うと、

 P型センエース2号は、微笑んで、


「勘違いするなよ、センエース。邪魔だから、外に放り出すだけだ」


「……」


「それとも、ここに置いておくか? 俺は、こいつを気にせず暴れるつもりでいるから、このカスは、すぐに死ぬと思うけど? どうする?」


「……ちっ……」


 センエースは、舌打ちをしてから、

 ゆっくりと目を閉じて、

 ハァと、薄く溜息をすることで、

 P型センエース2号の行動を了承した。


 P型センエース2号は、あまっている左手で、スゥっと次元に穴をあけて、

 ゼンを『認知の領域外』の外へと放り投げる。


「さて、これで、なんの障害も言い訳もなくなった」


「……言い訳?」


「お前が『俺に負けた時』の言い訳だよ。『ゼンがいたから、全力を出せなかったんだ』なんて言い訳はもう使えない」


「……すさまじい自信だな。俺が誰か知らないとしか思えない……が、しかし、どうやら、そうでもなさそうだな。少なくとも、お前は俺の名前を知っている。そして、ゼンに勝てるだけの力もある。この妙な空間でなら、おそらくゼッキになれるというのに、関係なく、お前は、あいつを足蹴にしていた……」


 そこで、息継ぎをして、


「お前は、いったいナニモノだ?」


 当然の疑問を投げかけられて、

 センエースの前に立つ彼は、自信満々の笑みを浮かべ、

 威風堂々と、



「俺は、P型センエース2号。簡単に言えば、P型センエース1号の完全上位互換だ」


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