第1032話 お前は強いよ、ゼン。
(存在値、およそ『2兆』……センエースによって抑え込まれているセイバーフッキ・ミラージュの潜在能力を、オーバードライブ・サイコジョーカーによって無理やりに引き出したか……凄まじいな……まあ、とはいえ、もちろん、俺の相手じゃないが……)
最短のステップで、闘牛士のように、ゼッキの『暴れ』をあざわらう。
(仮に、もっと『イカれた無茶』をして、セイバーフッキ・ミラージュの潜在能力を完全に解放したとしても……まあ、20兆~30兆程度がせいぜい。……今のお前では、どんなに頑張っても、それ以上は不可能だろう。制限をとっぱらい、無茶に無茶を重ねても、お前じゃ、俺には勝てない)
などと、心の中で思っていると、
「うぃいいい……がはっ! うぃぃい! がはっ、はっ、はっ!!」
限界を迎えたゼッキが、バランスを崩し、ッズサァアっと、地面に倒れ込んだ。
「げほっ、がはっ、うぇ……」
通常のサイコジョーカーであれば、プラスで鉄心コールを積むコトすら出来るほどの、圧倒的な精神力を持っているゼッキだが――しかし、流石に、オーバードライブ・サイコジョーカーを優雅に振るう事はできなかった。
結局のところ、強大な力に振り回され、SAN値を大幅に削り取られただけで終了。
※ フッキの潜在存在値が高すぎて、180に分散したとしても、現在のゼンでは耐えきれない。もし、ゼンの存在値がフッキと同等になれば、鉄心コールを積むことも可能となる。
あまりの精神的激痛から、のたうちまわっているゼッキの頭を、
「うぐぅうっっ!!」
ガシっと踏みつけながら、
P型センエース2号は、
「先ほどのお前の力は、普通に考えたら、かなりハンパじゃないんだがな……本来なら、世界を相手に無双が許される絶大な力。先ほどの力なら、大抵の相手には勝てるだろう。ゼノリカの天上に属する者でも、無策のタイマンで、あの力を前にすれば、流石にどうする事もできない。もっとも、センエースの神器が使えるゼノリカの連中なら、フッキの力を抑え込むのは、さほど難しい事じゃないから、実際のところ、お前に勝ち目はないが」
「ぐぅう……ぅうう……」
「お前は強いよ、ゼン。お前に勝てる者は少ない。それは嘘じゃない。『お前に勝てる数少ない超越者』の中にしか『お前が勝ちたいと思っている者』は含まれていないという……それだけの話なんだ」
「ぐ……ぅ……――」
最後に一度うめいてから、
ゼッキは気絶した。
スゥっと、エグゾギアが溶けて、
生身のゼンが、その場に横たわる。
ゼンは、間違いなく『将来的には神の王になれる可能性を秘めた光』だが、
この時点では、まだ積み重ねたものが少なすぎた。
より具体的かつ正確に言うと、
今のゼンでは、『P型が積み重ねてきた絶望』を超えるには足りていない。
「さて……ウォーミングアップはこのぐらいで充分だろう」
そうつぶやいてから、
P型センエース2号は、ゆっくりと息を吸ってから、
センサーを張り巡らして、外の様子を確認する。
「ふふ……ここを探しているな、センエース」
シューリにハッパをかけられた直後の事、
ゼンの気配が消えた事に気付き、
『誰か』が『どこか』へゼンを連れ去ったと理解したセンは、
即座に、問題となるエリアの周囲を捜索しはじめたが、
「むだむだ。俺の『本体』が製作した『認知の領域外』を見つけるには、お前でも、最低一時間はかかる」
必死になって、眉間にしわを寄せて、ゼンを探しているセンエースの姿が滑稽で、
P型センエース2号は、優雅にほくそ笑む。
「ギリギリまで隠れているつもりだったんだが……想定を遥かに超える速度でインストールが終わって、もう隠れている必要はなくなったんだ……というわけで、招待させてもらうよ……さあ、こっちだ」
※ センがゼンを助けるという事はありえない。
しかし、センは、『自分の敵』をゼンに押し付けるようなマネもしない。
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