第1030話 今、どんな気持ち? ねぇ、どんな気持ち?
「……はぁ? なんで、そこでタナカトウシの名前が出るんだよ。つぅか、なんで、あいつの事を知って――」
「まあ、あの例外は、お前よりも短時間で、お前よりも遥かに高い場所まで駆け上がったがな。あの例外が辿り着いた場所は、今の俺が、さらに『絶死のアリア・ギアス』を積まなければ届かないほどの狂気的な高み」
「……」
「アレと比べてしまえば、お前でもゴミになってしまう。それは流石にナンセンスだと判断した。アレはあくまでも例外。比べてはいけない狂気」
そこまで言った時点で、
ゼッキが、
「なあ、P型センエース2号……一つだけ、教えてくれ」
ギっと歯ぎしりをして、
「もしかして、あいつも……俺と同じように、異世界へ飛んだのか?」
それは、問いというよりも、ただの確認だった。
P型センエース2号の言葉以外の情報は何もない状況だけれど、
ゼッキは、『それも、十分に、ありえるだろう』と思ったし、
それだけではなく、もし、タナカトウシが、自分と同じような状況になったなら、
『自分など遥かに超えていくだろう』という確信もあった。
だから、
「あのキ〇ガイは……今の、この状態の俺よりも……強いのか……?」
「一つだけ教えてくれと言っておきながら、二つ質問するとは……豪気だな」
「答えてくれ……頼む」
「タナカトウシは、『その状態のお前』の10倍以上強い」
「……っっ」
「ちなみに言っておくと、タナカトウシが、お前と同じように、第一アルファから異世界に転移した時期は、この二次試験が始まって以降だ」
「っっっ?!」
もし、これが、あのキ○ガイ以外の話だったなら、
『いやいや、流石に嘘だろ。信じるか、ボケ。今の俺がどんだけ強いと思ってんだ』
となるところなのだが、
ゼッキは、
ここまで異常な話を聞いても、
しかし、普通に、
『ありえる』と思った。
というか、
信じる・信じないという領域の懐疑など、ほとんどなく、
『マジかよ、ふざけんな』と、ただただ絶望した。
「どうだ? そんな例外と比べるのは、さすがにナンセンスだろう?」
「……は、はは……」
ゼッキは、うつむき、右手で頭を抱えて、
力なく笑い声をもらした。
「ったく、あのクソカス野郎は……いつもだ……いつも、俺の遥か先をいきやがる……いつも、俺が必死になって積み上げてきたものをゴミにしやがる……ほんと、もう……死ねばいいのに……」
歪んだ本音がポロリ。
200億1万年たっても消えなかった『しこり』。
『それ』がもっとも色濃く残っている『時期(中学三年生)』であるがゆえに、
『本音の歪み方』にもエッジがきいている。
「なぁに、アレが例外なだけで、お前はよくやっている。タナカトウシの10分の一以下の力しか持たず、戦闘力に至っては、比べ物にならないカスっぷりだが、しかし、お前は、よくやっている。なにがどうとは言えないが、まあ、うん……よくやってる、よくやってる、えらいえらい」
P型センエース2号の煽りを受けて、
ゼッキの奥歯が、ギリっと、強く、強く、強く軋む。
目が充血して、
重たい汗がにじむ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます