第1018話 さあ、魅せてくれ。そして、俺に本気を出させろ。


「おかしい……こんなはずはない……本来のゼンの素質を考えれば、この時期にDの評価をつけることすらありえないんだ……『最も大甘に見積もった上での限界値』がDのはず……なんだ、これは……このズレはいったい……」


 ※ 解(補足)。


 至極簡単に言えば、

 ソル・ボーレは、

 センエースという光の『影響力』をナメていた。

 いや、その表現は、少し間違っている。

 正式に言えば、

 ソル・ボーレは、センエースという光を、最大限に評価していたが、

 しかし、

 センエースは、そんなソル・ボーレの最大評価を軽く超えてきたのだ。



「やばい……この『コアインターフェイス(ソル・ボーレモデル)』では、戦闘力評定Dプラス以上は対応できない……出力も、現時点だと、『対ゼッキ用』に引き上げるのが限界……まずい、まずい、まずい……キッチリと詰んでいる……」


「……あんた、さっきから、俺の話、一ミリも聞いてねぇな」


 完全シカトを受けている阿修羅ゼンは、

 そこで、チラっと、稼働時間のゲージを確認する。


 フッキから『お情けで貰ったフッキ鉱』のおかげで、『稼働時間が大きなネックという、かつての底辺すぎる状況』からは脱しているが、だからといって、『時間を無限に浪費してもいい』という訳ではない。


「もういいや……あんたの錯言(さくげん)に一々構っていたら、時間がいくらあっても足りない系のアレって事がよく分かった。……というわけで、ここからは、純粋に何も考えず、ただただ全力でぶんなぐっていくんで、そこんとこヨロシク」


 瞬間移動で距離をはかりながら、

 阿修羅ゼンは、P型センエース2号を削っていく。


 この両者、

 出力的にも、戦闘力的にも『大幅な差』はないので、

 一気にカタがつくことなどはなく、

 地味に、ジワジワと、両者のHPバーが減っていくだけという、

 見ている分にはヒドく退屈な、泥仕合の様相をていしていた。


 その泥仕合が、仮に、数時間単位で引きのばせる類のものであれば、

 P型センエース2号にとっては大歓迎の『効率がいい時間稼ぎ』なのだが、


(本格的にヤバい……想像以上にゼンが強すぎる……このままだと、もって10分、長くとも20分ほどで削り切られる……)


 『P型センエース1号の戦闘力データ』や、

 『D型の余剰経験値』を、

 このしょうもない『殻』にインストールするまで、

 まだまだ時間がかかる。


 短く見積もって一時間弱。

 長くかかった場合、3時間超。


(もたない……間違いなく、その時間が経過するよりもはやく、ゼンに殺される……『対ゼッキ用のコード』を使っても……この差は埋まらない……殺されるまでの時間に変動はないだろう……というか、こっちが出力を上げたら、向こうも上げてくるから、下手したら、より早く殺されるだけに……)



 などと、考えていると、

 そこで、

 阿修羅ゼンが、


「準備運動は、そろそろいいだろ? いい加減、俺も我慢の限界だ」


 待望のゲームを買ったばかりの子供みたいに、ニっと無邪気に微笑み、


「ここだろ! ど真ん中のタイミングだ! さあ、P型センエース2号さんよ……とくと魅せてくれ! 俺に、心底『全力を出さないとヤベェ』と思わせてくれ! あるんだろ? とっておき! 今のあんたがカスに思える、最強のスーパーモード!」


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