第1017話 戦闘力評定D。
「さてさて……いい感じに魂も温まってきたことだし……そろそろ、本格的に殺し合ってみようか」
阿修羅ゼンは、軽く肩をまわしつつ、首周りの血の巡りにも考慮しながら、
ググっと、『剣を握っている手』に力を込め直す。
気血が充実して、
テンションが上方修正されていく。
「ほいほいほいっとぉ!」
「ぐぅ! ぬぅう!」
剣で暴れる阿修羅ゼンと、
防御に徹するP型センエース2号。
阿修羅ゼンは、魔力で底上げされた剣を、決して悪くはないムーブで振りまわす。
まったくもって美しくはないが、
しかし、最低限の下地は出来ている剣技。
踏み込み足に体重を乗せて、
一つ一つの、局所的な円運動を滑らかにすることで、
全体的な弧が綺麗な丸になる。
まるで、円周率が、3.05より大きい事を証明しているみたい。
「おいっ、ちょっと待て! ゼン! お前、強すぎるぞ! どうなっている?! お前の『この時期における戦闘力評定』は『D』が限界だったはずっ!」
戦闘力をデジタルに測ることは出来ないが、
『おおざっぱに見積ったら、まあ、だいたいこのくらい』
という、『ざっくりとした視点での評価』をつけるくらいなら、できなくもない。
『戦闘力評定D』は、『決して弱くはないが、強いかと言われると微妙』というライン。
ちなみに、この評定は、勇者ハルス・レイアード・セファイルメトスを『最高評価のA(成績でいうところの『優』)』と判断した場合の基準。
仮に、センエースやソンキーといった究極の闘神達を『最高評価のA』と評定してしまった場合、当然だが、ハルスもゼンも、『Zマイナス』を大幅に下回った『弱過ぎて測定不能』という、無残な落第点となってしまう。
「……『俺の、この時期における戦闘力評定』って……なんだ、それ。お前は、あれか? 『俺が十五歳の時は、このくらい強くて、16歳の時は、このくらい強い』……みたいな一覧が分かっているってことか?」
そんな阿修羅ゼンの問いを、
P型センエース2号は、一切シカトして、
ぶつぶつと、
「こ、この強さは、どう考えても、『Cマイナス』を超えている……」
自分の世界に入り込む。
ちなみに、このランクは、
下から『Dマイナス』『D』『Dプラス』『Cマイナス』『C』『Cプラス』
と上がっていくので、
現在のゼンは、P型センエース2号が想定したラインよりも、
『2段階』ほど強いという事になる。
「おかしい……こんなはずはない……本来のゼンの素質を考えれば、この時期にDの評価をつけることすらありえないんだ……『最も大甘に見積もった上での限界値』がDのはず……なんだ、これは……このズレはいったい……」
※ 解。ゼンは、センエースの影響を強く受けたフッキとの闘いで、ソル・ボーレの想定を大幅に超える成長を遂げた。
ゼンが『センエースの命令を受けたフッキ』と闘って大幅に成長する、というのは、ソル・ボーレの中でも、想定の範囲内だったが、
――フッキのインテリジェンスが、センエースという輝きによって、大きな花を咲かせ、その流れを受けて、ゼンも限界以上に開かれる――
という未来(現在)までは予測できなかった。
いつだって、そう。
センエースの影響力は、ソルの想定を超えていく。
――そうでなければ、話にならないから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます