第1005話 フーマー大学園の設立に金銭面で最も貢献した公卿の名前は?
一方、その頃、
カルシィ・エーパ・ドコスの三名も、
転移トラップに動揺することなく、
サクサクと、出口に向かって進んでいた。
その途中、
カルシィが、ボソっと、
「まさか、ここまで『著しく偏った分け方』をしてくるとは……」
心配そうな声でそうつぶやいたカルシィに、
エーパが、
「まあ、でも、あの子も、今回のダンジョン攻略で☆9の強化パーツを手に入れて、多少は強くなったんだし、出口まで駆け抜けるくらい出来るんじゃない?」
続けてドコスが、
「ただ、ピーツは、『素の力』がカスすぎるからな……妙な暗号解読能力は持っているようだが、それだけだと、いろいろ厳しいだろう。あいつのことは諦めた方がいいかもしれん」
不安を煽ってくる。
カルシィが、ギリっと奥歯をかみしめて、
「私は、彼に、二次合格を約束した。それなのに、こんなところで、脱落させてしまったら、名折れ以外のなにものでもない。私の名誉のためにも、さっさと合流しなければ」
その発言を受けて、
エーパとドコスは、たがいに、小さな溜息をこぼしてから、
「お嬢って、ほんと、無駄な責任感が強いわよねぇ」
「なおしてくれねぇかなぁ、そのかったるい性格。自分のことだけ考えていてくれよ」
小声でぶつぶつ言っている二人を引き連れて、
カルシィは、ピーツと合流しようと、ルートを模索する。
そんな中、
ふいに、
カルシィが、
――ボソっと、
「……しかし本当に……まったく意味がわからない。なぜ、『3:1』でわけるんだ。普通、『4人』を二手に分けるなら、『3:1』ではなく、『2:2』だろう。仮に、偏った分け方をするにしても、そこは私一人か、ドコス一人にするべきだ。最弱の『ピーツだけ』を別にする意味がまったくわからない」
「ダンジョンに常識を求められてもなぁ……」
などと、ぶつぶつ言っていると、
少し広いフロアに出た。
そのフロアの壁には、石板が飾られていた。
フチに金が使われている、変に豪華な仕様。
その石板には、短い問答が記されていた。
「また暗号か?」
「違うわ、お嬢。暗号というより……クイズみたい」
問答の内容は、
『フーマー大学園の設立に金銭面で最も貢献した公卿の名前は?』
「そんなもの知るわけがないわ……」
「学校が創られた歴史なんか、誰も興味ないからなぁ……つぅか、一万年くらい昔の話だから、正確なことはわからず、諸説だけが山ほどあるって聞いているぞ」
と、エーパとドコスがつぶやいた。
その横で、
カルシィが、ニィと微笑み、
「くく、これなら知っている」
「え、ほんと?」
「ああ。実家の蔵に眠っている文献のいくつかに、フーマー大学園設立に関する内容が書かれていた」
「マジか……つぅか、そんなもん、よく覚えているな」
「そういえば、お嬢、昔は、よく古い本を読み漁っていたっけ」
「で? フーマー大学園の設立に尽力した金持ち貴族様の名前って?」
「それは、あれだ……あれ? えぇと……えぇと……」
「おいおい、お嬢、結局おぼえてねぇのかよ」
「まて、ここまで出ている……絶対に出るから、ただのド忘れだから……えぇ……と……そう、確か、龍試の時にも、ピーツが、ボソっと口にしていたんだ……」
「ピーツが龍試の時に?」
「ああ、ほら。『ラムドを倒して、なんとかみたいな神になる』……みたいなことを言っていただろう」
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