第1004話 お前がピンチになっても助けない。しかし、俺がピンチになったら助けてくれ。


「これだけの速度でダンジョンを攻略できたのは、おそらく、ピーツが、あの妙な暗号を解読してくれたおかげだろう。というわけで、最大の功労者であるピーツに、強化パーツを最初に選ぶ権利を与えよう」


「あ、どうも、あざーす」


 功績をたたえられ、好きなものを選べる権利を得たピーツは、


(☆9はかなりの希少アイテム……とはいえ、今装備させている強化パーツと比べれば普通にゴミだから、どれもいらんなぁ)


 などと思いつつ、

 味方の強化も念頭にいれながら、


「じゃあ、これで」


 と、『最も使いものにならないであろうゴミアイテム』を選別した。


 その後、他のメンバーが、それぞれ、強化アイテムを選び、

 自身の携帯ドラゴンを強化していく。


 ☆9の強化アイテムの効果は凄まじく、

 大学園チームは一気に強化された。

 順調これ極まれり。

 あまりに楽勝。



(このままいけば、二次は楽勝だな……つぅか、まあ、俺の携帯ドラゴンがいれば、二次だろうが、三次だろうが、関係なく、ずっと楽勝だろうけど)



 などと、心の中でつぶやいた直後のことだった。


 宝箱から全てのアイテムを回収し、

 それでは撤収を――と、カルシィが踵を返したと同時、







[――迎撃トラップ『家に帰るまでが遠足』を発動。侵入者チームは二手に分断され、ランダム転移を受けます。逃れる術はありません]






 電子音みたいな声が響いたかと思ったら、

 シュンと、転移特有の音が響いた。


 直後に感じた、一瞬のたちくらみ。

 地に足がついていないような不安感とともに、

 グルグルと視界がまわって、

 じゃっかんの吐き気におそわれた。


 その不快な無重力感は数秒で落ち着き、

 そして、気付けば、


「……おいおいおいおい、よりによって、お前と一緒かい……」

「まんま、こっちのセリフですよ、コバンザメ先輩」


 知らない場所に転移しており、

 隣には、ボーレしかいなかった。


 両者とも、『根本的な頭の出来』が悪いわけではないので、事前の電子音と現状から、『自分たちの状況(転移のワナをくらい、かつ、二手に分断された)』を一瞬で判断し、

 ――そして、だからこそ両者ともに絶望した。


「最初に言っておくがな、ポンコツ後輩。俺は、お前がピンチになったら、全力で逃げる」

「言われなくても分かってるよ」

「だが、俺がピンチになったら、ぜひ助けてくれ、親友」

「すげぇ神経してんな、あんた」


 くだらない会話をしつつも、

 二人は、飛ばされた先のフロアを探索して、次の道を探る。


 次のフロアに進む道はすぐに見つかって、


「おっ、進める、進める……このまま、なんの障害もなく、出口まで進めますように」


 と祈りながら先に進むボーレの背中を見ながら、

 ピーツが、ボソっと、


「あっちのチームも、うまく進めているかな……」


 そうつぶやくと、

 ボーレが、渋い顔をして、呆れまじりに、


「誰が、誰の心配してんだよ。少なくとも、俺らよりは大丈夫に決まってる。というか、こっちがひどすぎる。どうせ気を配るんなら、とんでもないお荷物を抱えている俺の心配をしてくれ」

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