第1003話 ピーツの奇妙な冒険。


 センエースとタナカトウシが裏でごちゃごちゃとしていた間、

 表の冒険者試験二次試験は、粛々と進行していた。


 冒険者になるため、携帯ドラゴンを鍛えるという、この謎状況。


 そんな中、いまだ、揺るぎないランキング一位に居座る絶対王者『ピーツ(P型センエース2号)』は、現在、




「ポロロッカ!!」




 とある洞窟で、

 石板クイズに挑んでいた。


 ピーツの解答は正解だったようで、

 ピンポーンという、軽快な音が響き、


 ゴゴゴっと、音をたてて、『彼らの行く先をふさいでいた扉』が開いた。


 石板に書かれた問題を見るやいなや、

 音速で答えを出したピーツに対し、

 ピーツの学校の先輩であるカルシィが、


「……すごいな、君は暗号解読が得意なのか?」


 カルシィたちからすれば、

 日本語で問題が記されているこの石板は、何が書かれているかすら分からない超難関。


 本来ならば、立ち往生するしかない場面だが、

 サブカルに精通した日本人のメモリーを有するピーツからすれば、

 『アマゾン川で~』から始まる問答は、素通りに等しい。


「いやぁ、まあ、多少は」


 などと、テレに染まった言葉でお茶を濁しつつ、小物っぽくポリポリと頭をかくピーツ。


 現在、彼ら『古龍殺しのフーマー大学園チーム』は、

 『レア度の高い携帯ドラゴンの強化パーツ』を求めて、

 東南にある洞窟に挑戦していた。


 この洞窟は、パズル要素の強いダンジョンで、

 戦闘能力はまったく必要としないが、

 『知識』や『頭の柔軟性』が求められる。


 先ほど、ピーツが答えた問題は、

 このダンジョンでも最強クラスに難しい暗号で、

 本来ならば、誰も答えられない『底意地悪すぎ問題』。


 それを解いてしまったものだから、

 ゴールまでの道のりが一気に解放され、


「あれ? もうゴール? なんだ、すげぇ短いダンジョンだったな」


 ゴールの宝物殿まで、ほぼ一瞬で辿り着いてしまった。

 宝物殿には、宝箱が七つ設置されてあって、

 開けてみると、七つ全てに、『☆9』という超レアアイテムが隠されていた。


 その現実を受けとめた『ボーレ』が、


「ふはははは! おいし過ぎるだろ、このダンジョン!」


 小躍りして喜ぶ。

 ここまで、特に目立った活躍をした訳でもないが、

 このチームに在籍しているため、順調に強くなっているボーレ。

 このままいけば、合格は確実。



 実は最強のピーツ、

 コバンザメのボーレ、

 大学園でも最強クラスの実力を持つイケメン系美女カルシィ、

 そんなカルシィの付き人である、回復役のエーパと、

 同じくカルシィの付き人である、シノビ型のドコス。


 そんな、ある意味バランス最強の五人パーティ『古龍狩りのフーマー大学園チーム』。


 他の参加者と比べ、圧倒的なアドバンテージを有する大学園チームは、

 今回のダンジョン最速攻略で、さらにアドバンテージを強める。


「これだけの速度でダンジョンを攻略できたのは、おそらく、ピーツが、あの妙な暗号を解読してくれたおかげだろう。というわけで、最大の功労者であるピーツに、強化パーツを最初に選ぶ権利を与えよう」


「あ、どうも、あざーす」



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