第995話 ウラスケの本音。
「ウゼぇなぁ……見えているが、反応しきれない速度……つまりは、俺の一歩上……」
「正しい理解力は尊い」
「上から言葉を降らすなよ。払いのけるのがダルいんだ」
「答えは出た。貴様は私に勝てない……世界は終わった。全てを受け入れろ」
言いながら、
バグが、ソンキーに向かって、
エネルギー弾を放とうとした、
その時、
「ディザスター・レイ!!!」
声の直後、バグの背後から、照射が飛んできた。
それなりの高威力エネルギー波だったが、
今のバグからすれば、低次元のお遊戯だった。
振り返ることもなく、
薄いバリアを張るだけで消失させる。
「……タナカウラスケ……なぜ、私に攻撃する?」
冷たい視線を送られて、
ウラスケは、
「わけのわからん虫ケラ、ごらぁ……調子に乗って、なにムチャクチャしてくれてんねん……」
まだ、じゃっかん朦朧としているが、
しかし、強い目線で、バグをにらみつけ、
「かえせ……『その二人』は、『ぼくの女』なんじゃい……」
つい、ポロっと本音をもらしてしまったウラスケに、
バグは、とうとうと、
「……高瀬ナナノと繭村アスカなら、私の中で、一つになっている。かえすもクソもない」
「なにが一つや……雑音と異物の受け皿にされとるだけやないか……」
「それは、ただの疑心暗鬼。うがちすぎて、現実が見えなくなっているだけ。私の中で、二人は満たされている」
「ぼくと一緒だった時までは、まだ、あの二人は、あの二人の意識を残しとった……けど、今は、ただ犯されとる……ただ、全てを奪われて……好き勝手やられとる……あの二人がムチャクチャされとるんを黙って見とる訳にはいかん……絶対にかえしてもらう」
「……はっ……威勢だけは、いつも一丁前だな……で? 実際のところ、どうする? 神気の一つも練れない矮小な貴様では、私に抗う事などできない。私からすれば、そこらを這いずるゴキブリと貴様との間にはなんの差もない。ただカサカサと目障りなだけで、大きな障害にはなりえない」
「確かに、いまのぼくでは何にもできん……けど……」
そこで、ウラスケは、
ギリギリと奥歯をかみしめてから、
「トウシ……ぼくと合体せぇ」
そう懇願した。
ウラスケの覚悟を見たソンキーは、
己の中のトウシと、部分的にスイッチして、
「合体ねぇ……その心は?」
「これまでの流れを精査した解答。あんたとソンキーのシナジーは完璧や。けど、一個だけたりんもんがある。それは、ぬぐいきれない歪み。ぼくなら、それを補える。あんたとソンキーとぼくが一つになれば……誰にも負けん」
ウラスケとトウシの会話を、
バグは黙って聞いていた。
矮小な小物のあがきを見守る姿勢。
『どうにもならない現実』をどうにかしようともがいている様は、
バグの魂に、震えるような愉悦を与えた。
『このために産まれてきたのだ』とすら思える、激烈な悦楽。
「……残念やけどなぁ、ウラスケ。あのバグとワシらは違う。誰もが皆、合体した分だけ強くなるわけやない。今のお前と合体したところでタカが知れとる。というか、普通は合体したら弱くなんねん。たいがい、ちょこっとステータスの数値が上がるだけで――」
「ぼくをナメるのもええ加減にせぇよ、トウシ」
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