第996話 タナカ・イス・ウラスケの本音。
「……残念やけどなぁ、ウラスケ。あのバグとワシらは違う。誰もが皆、合体した分だけ強くなるわけやない。今のお前と合体したところでタカが知れとる。というか、普通は合体したら弱くなんねん。たいがい、ちょこっとステータスの数値が上がるだけで――」
「ぼくをナメるのもええ加減にせぇよ、トウシ」
「はぁ? 別にナメてへんやろがい。ワシは最初からずっと認めとる。お前は天才や。演算力はワシの方が上やけど、集中力は、ワシにも負けてへん。お前は充分――」
「ぼくのウルトラ集中力は、あんたに負けてへんとか、そんなレベルやない」
「……」
「あんたに出来るか? ぼくのマネができるか? カスみたいな連中と、カスみたいな会話をして、カスの一つに『成り下がり切る』という超絶技巧」
「……」
「ぼくは、あのカス以下の連中と完璧に『融和』してみせた。誰にも本音を気付かせんと、パルスを調節して、凡人に『擬態』してみせた。『正常な世界』に、『溶け込んで』みせた」
「……なに言うてんねん。高瀬ナナノには気付かれとったやないか」
ソードスコール・ノヴァを使って、バグからウラスケを引っぺがす時、
ウラスケと彼女達の表層記憶に少しだけアクセスした。
その際、
トウシは、不可抗力で、ウラスケの人間関係を、少しだけ覗いてしまった。
これは、完全に事故だった。
なぜなら、実際のところ、ウラスケの人間関係になど、毛ほども興味がなかったから。
「一般人に気付かれる程度の擬態……そんなもんのどこが超絶技巧やと――」
「高瀬ナナノは、『タナカ家の人間みたいなイカれた男』が好きそうやったから、ぼくの深部をチラ見せしてやっただけや」
「……」
ウラスケの発言を受けて、
トウシは、つい覗き見てしまった『高瀬ナナノ』という人間を分析してみた。
断片的な映像記憶を覗き見ただけで、心を見たわけではないが、
行動や言動を解析することで、どういったベクトルの人間かグラフ診断することは可能。
(退屈を嫌う自由形で、こだわりが強い神経質。そのうえで、自己愛が強く、かつ、その偏った愛は、共鳴を求める傾向にある……確かに、ウチの血筋と、相性がええ。傲慢な言い方をすれば、ワシらは、その手のタイプにモテる傾向にある……)
頭の中で、そう結論づけると、トウシは、
「つまり、お前は、繭村アスカを利用して、高瀬ナナノの気を引いていとったわけか。ずいぶんとめんどうなことをするやっちゃなぁ」
「その分析は、ちょっと正確やないな」
「……ん?」
「アスカとナナノ、『その両方に惚れられとる――けどそれに気づいていない鈍感男』を丁寧に演じて、両者のぼくへの感情を強引に煽った」
なかなか最低な発言をサラッと、
まっすぐな目でそう言い切ったウラスケ。
だから、
「……『両者』ねぇ……」
トウシは、続きをうながした。
興味が出てきた。
ウラスケの話に、キチンと耳をかたむける。
「ぼくが本気を出せば、どうでもいい相手には、絶対に気付かれん。少なくとも、特に洞察力が鋭いわけでもない女子中学生にバレるようなヘタはこかん。大きな声では言えんけど……ぼくかて、タナカ家の人間や。そこらの連中とは質が違う」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます