第774話 ジジイ殺しのゼンチーム。
タナカトウシを呼ぼうとアレコレ準備をしているセン。
その一方で、『ゼン』たちには、次のイベントが起こっていた。
大量のMDPを投入し手に入れた大量のアイテム。
それらの組み合わせをアレコレ悩み、それなりの時間をかけて、ようやくカスタムしおえたところで、ふいに『どこからか現れた老人』が、彼らに話しかけてきたのだ。
「もしもし、そこの強そうな御方。ワシの願いを聞いてくれんかね」
この展開を受けてゼンは、
(俺たちの携帯ドラゴンが強くなったと同時にきたな……このジイさんのイベントスイッチは、おそらく、所有している携帯ドラゴンの強化値……ボーダーは『100%』あたりかな……)
急に発生したクエスト。
スマホでやっていた時に、『このまんまの展開』はなかったが、これっぽいものはいくつかあった。
スマホゲー版での『強化値1000%を超えた時に発生したイベント』は、それなりにおいしかったので、期待して話を聞いてみたが、
「ここから十キロ北にある山で、キラーデビルを20体倒してきて欲しいんじゃ。もし頼みを聞いてくれたら、報酬として、すごくいいアイテムを一つあげよう」
「また、典型的なお使いやな。で、どないする?」
聞かれて、ゼンは、
「ありえない。オールスルーだ、ドン」
即答する。
光の決断速度だった。
「えぇ、なんで? 受けてもええやん。たぶんこれ、条件を達成せな受けられんタイプのクエストやから、報酬も大きいで。もしかしたら、☆8とかくれるんちゃうかな」
「仮に☆9が報酬だったとしてもイヤだ。俺は『お使いゲー』が大嫌いだ。『すでに持っているものとの交換』とか『この場で闘って勝ったら~を贈呈』とかは好きだが、『~~で~~をしてこい』ってのは虫酸が走るレベルで嫌いだ。『てめぇで行ってこい』としか思わない」
「ほんまに極端な男やなぁ……」
そこで、ハルスが、
「俺も便利に使われるのは愉快じゃねぇ」
そう言ったことで、正式に、このイベントはスルーする事に決まった。
「で、ここからどうする?」
と、老人を完全にシカトして、次の行動についての相談を開始しようとしたが、
そこで、
「と、年寄りの頼みを無視するようなクズはぁああ……シネェエエエ!!」
急に、『か○はめ波を撃つ際の亀○人』のような、ムッキムキの姿に変身して襲いかかってきた老人。
それを受けて、ゼンは、
「おっ、この展開は悪くないねぇ。むしろ、大好物♪」
嬉々として、携帯ドラゴンに命令をくだし、『老人抹殺』を遂行しようとする。
ハルスも、
「ジジイの頼みを無視する若者よりも、頼みを無視されたからってキレるジジイの方がよっぽどクソだろ。笑わせやがって」
ニタァっと黒く微笑んで、老人の背後にまわり、携帯ドラゴンを突っ込ませた。
二匹の携帯ドラゴンに挟まれた老人は、あっさりと、
「ぐ、げげ……っ……」
血を吐きながら、バタリと倒れた。
その後、死体はスゥっと消滅して、その跡に、宝箱が出現した。
「よっしゃ、宝物ゲットだぜ♪」
「妙なテーブルゲームだけじゃなく、こういう、『ゲロカス以下のクソジジイを惨殺するだけでクリアできる楽なイベント』もあるのか。助かるねぇ」
「……なんか、このクリアの仕方、すごいイヤなんやけど……」
「……わたしも……」
と、不満顔をしているシグレとセイラをムシして、ハルスとゼンは宝箱の中身を確認する。
入っていたのは、
「まじでか! ☆9のアイテムだ!」
「ほう。ジジイを殺すだけの楽勝なイベントで、ここまでのアイテムを入手できるとは……いいゲームじゃないか。気にいった」
「シグレ! なんか、その辺に、かめ○め波を撃ちそうなジジイ、いねぇか?」
「いや、そんなん、めったにおらんから」
「どうにかして見つけるんだ! そして、かたっぱしから殺していくんだ!」
「闇堕ちしすぎやろ、正気を取り戻せ」
「セイラ、次から、ジジイを見つけたら、第一に切りかかれ。第二に爆破しろ。わかったな」
「いや、わからないよ」
「いいか、セイラ。抵抗してくるジジイはレアアイテム引換券だ。逃げるジジイは、訓練されたレアアイテム引換券だ。この教訓を忘れるな」
背中で語ってくるハルスに、セイラはジト目を向ける事しかできなかった。
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