第775話 国盗り。
センエースが、タナカトウシを召喚して一緒に遊ぼうとしていたり、
ゼンとハルスが、闇堕ちしたり、
その裏で、ピーツたち『古龍殺しチーム』が、まったく関係ないサブイベントに参加して真っ当にキャッキャしたりしている間も、当然のように、世界は動き続けていた。
ゼノリカへの対策会議が白熱して、妙な派閥が出来そうになっているフーマー、
魔カード革命が、とどまることを知らず広がり続けているセファイル。
その余波を受けて、様々な変革が起こっている、北大陸の他国。
と、まあ、そんな感じで、
第二試験が行われている間、
外でも色々と変化は起きていた。
そして、魔王国でも、変化は起きようとしていた。
「「失礼いたします」」
ダオとワイルは、そう言って、執務室に入った。
中では、ゴートがリーンと共に、優雅なティーブレイクに興じていた。
執務室に入ってきた二人の姿を一瞥したゴートが、
「どうだった?」
そう問うと、ダオが、
「交渉は決裂。――龍の国。鬼の里。妖精の都。――三国とも、魔王国に手を貸す気は一切ないと」
「いいねぇ」
「いや、何一つよくないだろう! 全滅じゃないか!」
焦ったリーンに対し、ゴートは、ゲンドウポーズで、
「これでいいんだよ。全て俺のシナリオ通りに事は進んでいる」
いぶかしげな顔をしているリーンに、それ以上の説明をすることはなく、
ゴートはスクっと立ち上がり、
「さぁてと……それじゃあ、国取り合戦といこうか。俺とリーンだけで行ってくるから、ダオとワイルは、サリエリと一緒に、プランBを実行にうつせ」
「「かしこまりました」」
恭しく頭を下げてから執務室を出ていく二人。
その背中を見送ってから、リーンが、
「お、おい、ラムド……どういうことだ? ワシと二人で国盗り合戦? それにプランBとはなんだ?」
「前者は言葉通り。後者は、富国強兵プランの第二弾だ。セファイルのレイモンドって企業がちょいと面白い事をしているみたいだから、こっちも便乗して、画期的な商品を売り出していこうと思ってな」
言ってから、ゴートは、アイテムボックスから、魔カードを一枚取り出して、
「こいつは、魔カードを改造して作った、特殊マジックアイテム。商品名は『ラムドカード』。効果は、ラムドキマイラを召喚できるというもの。このラムドカードを量産して売り出す。とりあえず、100枚ほど創ってみたから、まずは、これを、同盟国であるセファイルでさばく」
「き、キマイラ?! 伝説のモンスターじゃないか?! そんなものを100?!」
「キマイラじゃない。ラムドキマイラだ。俺が合成した特殊モンスター。存在値は25くらい」
「存在値25……召喚獣と考えれば、充分、強すぎるんだが……」
「そこよりも驚いてほしいのは、この『ラムドカード』という媒体の方だ。こいつは、従来の召喚用魔カードと違い、なんと、使い捨てではなく、何度でも使える」
「……はあぁ?」
「使用する際に魔力を必要としてしまうのと、『召喚に関する魔法』しか込められないのが難点だが、まあ、その辺は追々改良していくつもりだ」
「な、何度でも使える、存在値25の召喚獣が込められた魔カード……そんなものが100枚……」
「なかなか楽しい事になりそうだろ?」
「ラムド……あなたは、世界をどうするつもりなんだ?」
「世界をどうするつもりって……それは何度も言ってきただろうが。ラッピングしてお前にプレゼントするつもりだって」
「……」
「さぁて、それじゃあ、国盗り(デート)に行くとしようぜ。まずは、南大陸西部――龍の国を、偉大なる我らが女王陛下の足下に平伏させる」
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