第773話 あーそびーましょっ。


 次元の向こうは、銀河を敷き詰めたような、幻想的な空間だった。

 空間と呼んでいいのか分からない、妙な多元性で構築された座標。


 そんな謎の場所で、

 センは、


「……あれは……コスモゾーンか……?」


 無数のクリスタルの集合体を発見する。

 とても巨大で、けれど小さくて、

 遠くにあるのに、近くにあるようにも感じた。


 この妙な空間の『中央』に浮かんでいて、『中央以外』にも存在していて、

 『愛されたがっている』かのような、『理解される事を拒んでいる』かのような、

 冷たくて温かい、そんな淡い光を放っている、透明度の高い結晶。


「……いや、コスモゾーンそのものではなく、そのフラグメント(破片)か……端末と呼んでもいいかもしれない……」


 センも、ハッキリと、『コレ』を理解する事はできなかった。

 『最果ての向こう』を歩く『神の王』になっても、

 コスモゾーンだけは、いつまでたっても、『良く分からない謎』のまま。


 センは、 コスモゾーンのフラグメントが放つ絶気に触れてみた。

 すると、




「……『解』が……俺の中に浸透する……」




 しみ込んでくる。

 センの中で、センと一つになろうとする、世界のカケラ。


「……もらっていいのか?」


 答えは帰ってこなかった。


 ただ、



「……再構築されていく……俺の中で……この世界のシステムが……」



 センは感じた。

 自分の中に、この世界が収まっていく衝動。

 世界運営を託されたという高次理解。


「……遠慮はしない。これまでの神生で、託されたもの、背負ってきたもの、捨てられなかったものは、たくさんある。お前はその一つになるってだけだ」



 破片は何も答えない。

 ただ、センの中に収まっていき、

 そして、いつしか、完全に消失した。


 センは、自分の中に溶けていったカケラに、数秒の黙祷(もくとう)を捧げてから、


「完全に託されたわけではない……か。いくつかプロテクトもかかっている……特に、P型センエース2号に関するデータには、どのルートからもアクセスできないよう、強靭な縛りがかけられている……」


 『何者なのか』は勿論、『現在どこにいるか』すらも分からない。

 現状のセンは、『この世界の権限』を有しているというのに、

 P型センエース2号に関してだけは、何もすることが出来ない。


(……まだまだ面倒は続きそうだな……だが、対処するための手段は得た)


 そこで、センは、『出来ない事』から意識を外し、

 『出来るようになったこと』に集中する。



「もはや、このMDワールドは俺の手の中……ここからは、俺がゲームマスターだ」



 そうそうに、一プレイヤーから抜け出し、

 ゲームの頂点に立ったセン。



「それでは、さっそくはじめていくとしようか。センエース流の携帯ドラゴンを」


 言いながら、センは、このMDワールドのシステムに手を加えていく。

 最大の目的は、やはり、自分とゼンの強化。

 携帯ドラゴンを強化するためのシステムにテコ入れをして、

 センとゼン、両方の携帯ドラゴンを極限まで強化しようとする。


「こっちで勝手に強化値を上げる事は出来ないか……強化パーツの作成にも、無数の制限がある。ムチャクチャ強固なアリア・ギアス。構築に組み込まれているナノ・スピリットが、かなり異質……鬱陶しいな……しかし、条件さえ満たせばオッケー。非常に合理的。となれば、そのためのルート作り……うん、いけるな……」


 その過程で、


「……ん」


 非常に『面白いシステム』を発見した。

 それは、


「ほう……他の世界から、参加者を引っ張ってくる事も出来るのか……おっとぉ、マジかよ。第一アルファから連れてくることもできるのかよ。ハンパねぇな……ふむふむ」


 そこで、センは考える。

 自分の中で、ルートを築いていく。


 そして、


「……よし、決めた」


 そう呟くと、

 センは、このゲームに、


「トーウーシくん……あーそびーましょ」


 古い知人『タナカトウシ』を参加させる決断をくだしたのだった。






 ――タナカトウシ。

 それは、

 この世でたった一人、

 究極超神センエースの心を折った男。

 狂気の頭脳を持つ、比類なき天才!!



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