第755話 賞金、15万MDP!
告知を受けてからキッチリ一時間後、
指定されたイベント会場には、30人ほどのイベント参加希望者が集まっていた。
ゼン「最初のイベントだってのに、5分の1しか参加してねぇのか……」
シグレ「もしかしたら、すでに、どっかのダンジョンとかに行っとんのかもね」
ゼン「もしくは、『将棋』ってのがなんのこっちゃ分からないから見送ったか……」
そこで、ハルスが、
「大半のやつは、イベント告知を見た際に、『オリジナルゲーム系か。厄介だな』と思うだろうからな。冒険者試験じゃあ、たまに、オリジナルゲーム系が出題される。そういう時は、大概、落ちる率があがる。『適応能力が抜群に高いやつ』ってのは、実際のところ、そういない」
「……へぇ」
「ちなみに、俺が受けた時も、オリジナルゲーム系はあった。囲碁ってやつでな。あれも、この将棋ってやつと同じで、シンプルなくせに、底が深かった。周りにいる連中が全員カスみたいな連中ばかりだったから楽に勝てたが、『囲碁を長年やってきた達人』に『サシで勝て』ってルールだったら厳しかっただろうな。まあ、ガチ勝負ルールだったとしても、結局のところは俺が勝っただろうが。俺は天才だから」
「ぉ……おう」
話していると、司会者が壇上に上がり、
「それでは、これより将棋大会をはじめる。優勝賞金は15万MDP!」
ゼン「おっとぉ、なかなかの金額だねぇ。15万円課金って考えたら、まあまあの相当」
シグレ「トップ層にまで登ろうと思ったら、全然の額やけどなぁ」
ゼン「中坊で無課金勢の俺からしたら、目玉が飛び出る額なんだけどなぁ……一年間の生活費の1・5倍だし」
などと話している横で、セイラが、
「うわぁ……なんだか、ドキドキしてきた」
と、手汗を服で拭きながら、ボソっとそう言った。
「……こんなしょうもない大会でドキドキする理由がどこにあるってんだ」
とりあえず、セイラにもルールを教えて、ゼンたちは全員で参加する事にした。
司会の進行もスタッフの動きもAI的にスムーズなため、大会は滞りなく進行していく。
用意された15のテーブルに、将棋盤をはさんで、二人ずつ座る。
背後には、一組につき一人、審判が用意されていた。
「各自に配布されたルールブックの使用は自由! まずは、1分間の読み込みタイム! 一手30秒の早指しなので、ゲームがはじまってしまえば、ルールブックを読みこんでいる暇はないぞ! この1分間が勝負だ! では、ルールブック読み込み1分間スタート!」
参加者は、いっせいに、ルールブックを開き、パラパラと内容を確認していく。
ゼンたちも、一応、ルールに違いがないか確認していく。
特に変更点もなかったので、一分以内に普通に読み終えた。
キッチリ60秒後、
「それでは、はじめてください」
開始の合図で、パチパチと駒を進める音が響きだす。
ゼンたち『ルールを知っている組』は、相手にルールを覚えるスキをあたえないため、とにかく、ノータイムで序盤の定石を進めていく。
まだルールを理解しきれていない他の参加者たちは、とにかく、毎回、毎回、30秒いっぱいを使っていく。
――ゼンは思う。
(俺は将棋の才能も当然のようにゼロだし、将棋の訓練をしたこともない『素人ど真ん中』だが……流石に、『今まさに、ルールを覚えている最中のやつ』には負けねぇ……)
驚異の早指しで、相手にルールを覚える隙を与えない戦法は、
実際のところ、かなり有効で、
結局、相手がそうそうに『王を晒すミス』をおかしたため、
ほんの十数手で勝負は決した。
事前予習は効果抜群だったようで、ゼン一行は全員、あっさりと勝ちあがった。
ただ、二回戦で、ゼンとハルスが当たってしまい、
「ゼン……お前……弱いな」
「……うるせぇ。俺は弱いんじゃない。普通なんだ。もっと言えば、お前の頭がおかしいんだ」
一時間前にルールを覚えたばかりのハルスに一瞬で吹き飛ばされ、
ゼンの初イベントはあっさりと終了した。
ゼンチームの主役、
はやくも退場!!
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